道を買い、知らぬ場所を歩む。
それは以前にも選んだ方法で、今回もまた同じはずだった。





冷たい壁の鈍い反響は、ずっと耳の奥に残っている。
縮こまった声の硬さは、まだ思い出せる。

その意味することは終ぞ理解できないまま、何を話していたのかは忘れてしまったけれど。



冷たい壁を思い出す。
重い空気を思い出す。

皆が進むため、なんて大層な理由を掲げておいて、自分はもしかしたら逃げたのかもしれない。
皆は今日も、あの昏い場所を進んでいるはずだ。

「……ああ、」

目の前の背中を追いながら、息が溢れる。


（ラズとフィーのごはんがたべたい、）

空腹でもなんでもないのに、そんなことを思う。
ひと月あまりを共に過ごした仲間が、酷く恋しかった。

がしがしと振り切るように頭を掻き、視線を戻した。