サダクビアの面々の得物なんかは大体が自分やイリーシャが請け負うが、特に新調の必要がなく手が空いた時には偶々行き先を同じくする別の一揆衆から依頼を受けることもままある。
今日受けた依頼は三つ。
それぞれの依頼品を検分して細かな綻びが無いかを隅々まで確かめてから布に包んで引き渡す準備を整えて、——ふと、作業場の端に避けていた端材が目に入った。
不揃いな長さの糸や紐を捨ててしまおうと手を伸ばしかけて、しかしその手はぴたりと止まる。

共にメルンテーゼを進む仲間に、組紐を贈った事がある。
数日前にマグへ装飾を設えたついでに有り合わせの端材で作った弱いもの、ではあるが。
そうしたら、自分のものはどんな色かと問われて答えに困ったものだ。
自分の分は、どうも後に回してしまう。


『麦草色、のような色はありますか？金色になる直前の、緑がかった……』


自分の組紐を作ろうにも色のイメージがつかなくて、逆に問い返したらこんな答えが返ってきた。
それを、思い出して。

最初に手を伸ばしたのとは別の理由で、端材を掴む。
さて、名前はどうしようか。

　　　　　　ぐうううう

笑いにつられたように、声は出さないまま、口元をほころばせる。

(面倒くさそうに溜息を一つ。すらりと得物を抜き、構える）

（手袋を着用する