「アールさん…？」


突然慌てだし正座する姿に啞然とし、身体を起こした。
乱れていた毛布を手繰り寄せ、羽織るように肩にかける。
何も見につけず正座するその姿は滑稽なようであり、彼らしくもあるように思え、眉を寄せる仕草だけで小さく笑う。

アールが指輪を取り出すまで、時折小さな頷きを返しながら、ただ静かに彼の言葉を聞いていた。
されるがままに、彼が自身の左手の薬指に指輪をはめる様を眺め、指輪のはまった指を一度、曲げては伸ばした。


「……　話してくれてありがとう、アールさん。
　私たち、きっと、もっと思ったことを、素直に話せていればよかったんだわ。
　…　お互いにね。」


指輪の石は薄暗いなかにあっても、それが青をたたてているものであると彼女の目には知れた。


「そうすれば、私も、アールさんも、
　きっとふたり一緒にいるのに、迷子のようにならずにすんだのかもしれない。
　でも…　すこし、遅かったね。
　


　今となっては、」


一時の、もしくは永遠になるかもしれない、別れを覆すことはできず。






「私も、寂しいわ。
　…　アールさん、どうしてこの指に、指輪はめてくれたの？」


彼は、その意味を知っているのだろうか、と。

少女はソワソワしている。