「……よォ、こうして集まんのも久々だな？」

　どこからともなく。和装を着こなした黒髪の男が歩を進めた。
　浮かべる笑みはどこか下卑たような、かといって汚らしいわけではない。

「出てこれなかった、が正解だけどよ」
「……レニオスとガレンは？」

　きょろ、と大きな金目を揺らして、同じく和装の子供が無邪気に問う。その両腕は、濡羽色の羽毛に覆われている。明らかに骨格も人のそれとは違うもの。鳥の翼。

「まだ出てこれねぇんだろ、単純に。……そうビビんなよ」
「ぼくはびびってないよ！フェイルがおびえるんだ」

翼の少年の陰で震える、もうひとりの少年の姿がそこにある。
『他人格』。他者の精神を、半ば寄生させるという形で取り込む力。
この場にいる全員が、何らかのきっかけを経てレンガの精神に寄生した他者の人格だった。

「フェイルは敏感だから。漣がそーやって威圧感ばりばりにするからいけないんだよ」
「そんなつもりねーよ」

　腕組みをして不機嫌げに眉を寄せた青年の姿を見て、ますます少年は縮まり込む。翼の少年はむう、と頬を膨らませた。

「ねえ、いつになったら表に出られるの？」
「俺が知るかよ。レンガ次第じゃねえの」
「それはいつものことじゃないか」

　子供のどこか切実さを滲ませた再びの問いにも、漣はそっけなく答えた。青年が見据える視界の先、何もない暗闇にふたすじの光が射し込んでいる。

「とりあえず俺らは、『ここ』でレンガの手伝いをする以外には何も出来ねーんだよ。今はな」

　
　了承の言葉には、少し安堵する。
　そしてその語りには、眼を瞬かせて。ほんの少しだけ首を傾けた。
　

　

　
　口振りからして、そんな事はないのだろうけれど。疑問はそのまま口をついて出た。
　

シンプルなブラウニーがクリスマスカラーのリボンで飾られた袋に入っている。