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　＞　前回のあらすじ　＜
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拝啓、パパへ。


腐肉が私を利用して何かよからぬことを企んでいる。
このままでは危険だから、彼を捕まえるのを手伝ってほしい、と壮大過ぎる話を聞かされ、
悩んだ末に私は喋るファンシーぬいぐるみこと魔法使いの「ヨド」と手を組むことにした。


ヨドの頼み通り、腐肉を城に連れてきたはいいものの、私達はB級映画のようなゾンビの群れに追われ、それでもなんとか命からがら逃げた私たちの前に、約束通りヨドが現れた。

腐肉が悪者だか変態だかの真偽はともかく、これで腐肉はお縄について私もようやく腐肉から解放されるはず！

やったねパパ！　これで元の世界に帰れそう！！



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ヨドのその言葉の後。私は、



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　　—大廊下—

赤い絨毯の上に残されたのは片腕は返事をすることも無く。

空を切るような音を立てて消えた、片腕以外の身体の影は広い廊下のどこにも見えなかった。

叫び声を上げる坂本に、淀川は身じろぐ事も無く間の抜けた声で返した。
今までぬいぐるみから聞こえていたアニメのような高い声は、いつの間にか初老の男の声に変わっている。



ひどく動揺した様子の坂本の横で、腐肉は静かに残された有の腕に近づいた。

淀川が言い終わるか否や、腐肉の背中が膨らみ、勢い良く骨で出来た触手が飛び出した。
それらは這うように床を滑り、瞬く間に淀川の身体に巻き付いてぬいぐるみの身体を乱暴に持ち上げる。
触手の下でやわらかそうな生地がぶつぶつと小さく千切れるような音を上げた。

布が裂ける不快音が、淀川の声を掻き消した。

続きの言葉もないまま、ぬいぐるみの首がゆっくりと傾いて床へと落ちる。
触手の中で潰された身体は綿と生地がもみくちゃにされたまま、はらはらと散っていった。

広い廊下に足音を響かせることなく、ぬいぐるみが駆けていく。
その後ろ姿を慌てるように、目で追いかけながら坂本は床に横たわったままの四谷の身体を恐々と持ち上げた。腐肉の後に続く形で、足音が廊下から遠くなっていく。

大廊下に、ばらばらになったぬいぐるみだけが遺された。

廊下に再び声が届いたのは、程なくしてから。
弾むような足音を立ててやってきたのは中学生程の桃色髪の少女だった。

明るくもどこか間の抜けた声は、少女の着ている服の通りアニメのような現実感の欠けた声をしていた。
少女はぬいぐるみの首をその手で弄びながら、鼻歌交じりに坂本達が去って行った廊下の先を進む。


その背中に、若い女の声がかかった。

いつの間にか、少女の後ろに人影が立っている。

ピンクを基調にした、アニメのようなフリルの付いた服の上に白衣を羽織った女だった。
歳は少女よりは少し上か、もしくは同じくらいに見えるのは落ち着きぶりからだろうか。
その両手には、少女が抱える首と同じ見た目のぬいぐるみがいくつも下げられていた。

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　　—護りの森—

　——しっぽがふらふら揺れている。