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　＞　 前回のあらすじ　＜
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拝啓、パパへ。

パパ、聞いてほしい。

先月の事。私は相も変わらず進展しない研究のせいで目途の立たない帰宅への道に途方に暮れていた。
一切研究に協力する節を見せず、どこかに消えた腐肉にいい加減腹を立てた私は、腐肉を探して歩き回っていたところ…
ふと振り返ると、自分の後ろに熊のぬいぐるみが見えたんだ！
女の子向けアニメに出てくるぬいぐるみだった…そして次の瞬間、熊は私に向かって口を開いて———

気が付くと、私は熊に罵倒されていた………


どう思う？



…………………………いや、どうもこうもないですよね。




　———————




「二度あることは三度ある」ということわざがある。

同じようなことが二度も起きると、更にもう一度繰り返されることがあるものだから、悪いことがまた起こらないように注意しろ。

という意味だったと思う。

どうやら不幸にも妙な世界に片足突っ込んだ身なのだから仕方のない事だと言われてしまえば、
ぐうの音も出ない正論なのかもしれないが。

拝啓、パパへ。

妙なしゃべるぬいぐるみに三度も出会う、というのはやはり不条理を感じるものですね。




　———————

……………こいつは何を言ってるんだ。
あまりのことに混乱する頭からようやく出た言葉は、まずそれだった。
現実逃避はやめろ、と目の前の熊には言われたが、
もうどこまでが現実逃避なのかわからない。

腐肉がまともじゃないのは、元から知っていたことだ。

車に轢かれそうになった私を助けたという恩人で、
助ける代わりに働く羽目になった私の雇用主で、
他人なんて気にしない冷徹人間な上に骨や死体に興奮する変人で、
童貞をこじらせた結果、よくわからない超常現象を起こせる魔法使い。

それが実はとんでもない魔法を持っていて、
その魔法と私を利用して何かしようと企んでいて、
世界がそれでおかしなことになっているから追われている？

若気をこじらせた中学生が考えた小説の人物か何かでしか無い。

いや、それならまだいい。一人の頭の中の話で完結してる話ならまだいいが。
その上、それに私も巻き込まれているというのだから、たまったものではない。

世界を守って欲しい、だなんてゲームやライトノベルでしか見た事が無い。
臨死体験にもジャンルが選べるなら、このジャンルは選ばなかっただろうに。

恥も外聞も無いなら、私は頭を抱えて叫んでいただろう。
いい加減に夢なら覚めろと。早く誰か叩き起こしてくれと。
臨死体験中でも生真面目なものだと、他人事のように思う。

ここまで目の前の現実に不信的になったのは、腐肉に自分の今の状況の事を説明された時以来だ。
何が正しいのか。そもそもこれは現実なのか。


熊の言っていた事は的確だった。
私が二つ以上の意味で現実逃避をしていたのは、間違いない。

これはただの臨死体験で、夢だと思っていた。今でもそうだと思っている。
だから、あんな変態のいう事を聞いてこんな目にあっている。夢だろうとどうであれ、いつかは解決するだろうと思って。
自棄になりながら今に甘えていただけだ。


……だけど、これが夢だとしてもちゃんと考えるべきだっていう事だろう。

この放り出された感は何だろう、とぼんやり思う。
いや、放り出されたなんて言い方は自分勝手だ。
手引かれてじゃなくて、自分で考えなきゃいけない時が来ただけだ。

学校の進路相談に似てるな、なんてふと思ったら、次々に元の世界の事が思い浮かんで来た。

進路を考えるべく、パパの大学に見学に行くつもりだったその日から、私はこのとんでもない体験をする羽目になった。

学校で私を待っていたパパと、家で帰りを待っていたおじいちゃん、おばあちゃん。
休みの間に遊ぶ約束をした友達の顔が鮮明に浮かぶ。


早く帰りたい。　いつだってそう思っている。





しばらく黙っていた筈だと思う。　その間、目の前の饒舌な熊が喋ることはなかった。
私は、意を決して口を開いた。

殺 伐 と し た 広 場 に テ ィ ー ガ ー II が
　　　　＼オブイェークト／
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