『星の夢』の名を冠された魔法の銃。幾重にも張り巡らされた術式を慎重に紐解き、再び編み上げてゆく。
惑わしのちからは淡い光を放ちながら解かれ、命を輝かせる新たなちからの形を成してゆく。
——冬空のもとにも咲き誇る、小さな白い花のように。

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元々自分達は研究者である。
いくさの為ではなく調査の為にメルンテーゼ入りしたとは言え野山に分け入れば魔獣やらに襲われる事は多々ある訳で、
肝心の調査に差し支えがあってはたまらぬと言う話になり——闘技大会というお祭り事があるという事実は見ないふりをしておくが——皆の装備を見直す事になった。


この異界では、元の世界で所持していた技術は随分と制限される。
鍵の塔に居た時ならば一人で全てまかなえたであろう合成、作製、付加などは各自で手分けせねばならず、なお足りない場合は他の一揆参加者に助力を乞わねばならない状態であった。

扱いの容易な素材であればなるべく身内で済ませよう。
自然とそういう流れになった結果、同行者のひとり——黒狼の青年、スーノは自らの手で自分の装備品に付加《エンチャント》を施す事になった。


そういう、訳だったのだが。




「おっし、出来た！」

喜色をはらませた声で、黒髪の青年は作業の完遂を高らかに継げる。
確か先だってレイ——今は水辺の調査に赴き、自分達森林組とは別行動をしている——の手で造られた耳飾りに付加を施すと言っていた。


「上手くいったのかや？」
「おう、バッチリだ！ほら！」


少し浅黒いその手に握られている、黒水晶で出来た耳飾り。
そこには先日手に入れた骰子が付加されて——いや、





ぺたりと、貼られていた。







セ○テープで。






「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「ぅん？どうした？」
「スーノさん……これは……」


あどけなさを残した少年——エルが、如何にも困惑していますと言った顔で青年を見上げている。


「できて……ないよね……？」
「いや？何かこう、手とか動かし易くなったし成功してるぞ？」
「何でセ○テープで貼っただけで付加できちゃうの！？おかしいよ！？元素の世界おかしいよ！？」
「……ぷっ」
「やーでも出来ちまったモンは仕方ねえし、結果オーライだろ？」
「うう、良いけど良くない……付加って何だったの、ねえ……」
「元素の世界、凄いですね…っ」
「ふふ、リラの嬢やが見たら『これで付加が可能になる理由が判らん、分解して確認させろ』とでも言いそうじゃのう？」
「させねえよ！？」


少年と青年の何とも気の抜けるやり取りを見ながら、物静かな方の黒髪の青年——ラザラスが大きな声をたてて笑っている。
物珍しくも微笑ましい光景は、笑い過ぎた青年の息が切れるまで続いていた。


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通信魔導具に流していた魔力を止めて通信を切る。
そのまま癖で仕舞おうとしたところで、先程まで会話を交わしていた相手の言葉を思い出す。

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スーノさん（ENo.1199）、エルくん（ENo.1210）、ラザラスさん（ENo.1499）お借りしました！
チキレに打ち勝っていればお３方の日記と内容がリンクしている筈です(´゜ω゜)

細かい差異については大魔法”パラレル"で！

首を傾げ、少年本人と、傍に居た筈のふたりを交互に見る。

ナイトメアは苦虫を噛み潰したような表情をして、僅かに視線を逸らした。

不思議なものだな、とぼやき、頭を振ってみせた。