本当なら、もう少しのんびりと山登りをする予定だった。
と、言うのは陸月の弁で、たどり着いた先には何故か竜使いが立っている。
弁明の余地も無く相対する羽目になってしまった事を陸月はとりあえず平謝りしたりした、のだが。
勝機は、といえば限りなく薄いだろう。なんて、みんななんとなく思っていた。

近づいてきたナズナをヘリオは静かに見据える。

ナズナに訊ねられて、ヘリオは少し離れた所に座るコルヌを見る。
ナズナも釣られるように視線を向けた。
二つの視線を向けて、コルヌが立ち上がる。

──リン

鈴の音が鳴った。
ナズナはそれを見てコルヌに近付いていく。

ヘリオとコルヌを見比べてナズナはぺこりと頭を下げた。

ヘリオは吐息混じりにそう答えて、コルヌを見た

──リンッ

先程よりも強い鈴の音は肯定を示しているらしい。
ヘリオはひとつ頷いてからナズナを見る。

ぺこぺこと再び頭を下げて、それからぐっとガッツポーズをしてみせる。
ヘリオはやれやれ、と息を吐いてコルヌは再びその場に座った。


『……子供の頼みじゃ、断れないよね。まーなんとかしてみますか』

何か声が聞こえたような気がしてナズナは辺りを見渡す。
が、人の姿は見当たらない。

ちらり、とコルヌを見るが、何も言わずに伏せてしまって、それ以上反応は見られない。

教えてくれよ、というヘリオにナズナは頷いた。

──リンッ

鈴の音が静かにそれを見守った。



＊　＊　＊　＊　＊　

鈴の音が聞こえる。