どうなら何が待っていたかは知っているようで、かかっと笑って。

と、歌声に耳を澄まし、目を細めて

そうだねぇ。と一つ置いてから。
「案内してもらうのも悪くないけれど、前に言っていたとおりのんびり二人で散歩するみたいなのでもね」と



陽が落ちていく。陽気に満ちた季節とは言えども、時が流れるにつれわずかな肌寒さが感じられるかもしれない。それが不安を助長するようなものに変わったころ。

見覚えのあるエンブリオが森のほうから歩いてくるのが見えた。
ただ以前の彼女と違うのは両肘から先がなくなっていることであり、傍らのもう一人は寄り添うように彼女を支えている。
だが、腕を失っているにも関わらず彼女には悲壮な様子が一切見られず、むしろ快活に声を掛けてきた。

とそこまで言って、リコッタさんのいた場所からなんとなく状況を察し

正確には運ばれた、だけど。　と小声で追加し

そういうと、あたしも一応見てもらわないといけないから、そろそろ行くねといって頭を下げる。


数日後。

手紙が届きました。

リコッタさんへ。
急に姿を消してしまってごめんなさい。どうしてもやらなければならないことがあったから、あんなことになっちゃった。
心配をかけた……とサーリャに滅茶苦茶怒られました。追加でごめんなさい。
身体もある程度は大丈夫になりました。
それで、実は渡したい物ができました。お守りのような、友情の証のような。
といっても、先日まで連れそってくれた剣が壊れちゃって、その残骸を砂のように加工して、カプセルに封入したもので、ご利益があるわけじゃないんだけどね。
だから、どちらかというと後者。友達に渡したい小道具みたいな物です。お世話になった色んな人たちに渡したいと思っていてね
今度会うときにきっと渡せたら、と思っています。
その時は是非、街を案内してください。ゆっくりとリコッタさんのペースで。
それでは、その時を楽しみに、待っています。

貴女の幸せな友人。フィーナ・タルムード


手紙はそう結ばれていました