新しく契約したエンブリオのルラウがそう呟く。
　そう言うのも仕方がないな……と私は空を仰ぐ。日が容赦なく私達に降り注ぎ、地は何も生えていない砂ばかり。
　今進行しているのはアルラウネ達と契約した平原ではなく、砂地なのだ。

　城内への隠し通路を探すため、砂地に進攻したことのあるチハヤという少女と一時的に組むことになった。
　彼女の道案内のお陰で私が一人で進むより、遥かに早く進むことができている。
　私は守護者熱血ガリバーヴォルグの御加護を得ているからか、暑さをあまり気にせず進めている。
　しかし、よく整えられた広庭の気候から一転してこの砂地へ進行したからか、平原のエンブリオ達はやや対応できていないようだ。

　ケットシーのエリザベスは暑さに耐え切れずドールの頭に乗っかっている。

　普段冷静なキラーウルフのヴォルルも良くわからないことを言っている。
　アルラウネのルラウもずっとイライラしてばかりだ。

　疲れ気味の私達を励ますためか、日差しでチリチリといい具合に焼けているアニマのモウシフリが私に話しかけてくる。
　そうだな、と私はモウシフリに答えた。実際、強くなった実感はある。エンブリオと契約し、仲間達とあらゆる戦いを切り抜け……。
　私は腰に差している竹刀に手を触れる。今別行動をとっている仲間の一人が作ってくれた物だ。

　三人達も、合流する時には前より強くなっているだろう。それに答えられる程度には強くならなければならないな、と私はふと思った。

　私の心を読んだかのように、シェイドが私に声をかける。確かに黒い影が動いている。その洗練された動きからは強者の気配を感じる。
　私はふと後ろを振り返る。私が契約したエンブリオ達が居る。彼ら、彼女らの力を借りれば、どんな敵だろうと戦える、そんな気がしつつ、影に対して身構えた。






「あー、誰かいた。こんちわー」
　横に居たチハヤが気さくに影に声をかけていた。
「ひぇああッ！？」
　影は驚いたのか、間が抜けた声を出していた。