このメルンテーゼという世界で、オレは【作製】という技術を手にしている。

この世界で手に入る素材から様々なものを作る技能だ。
モノを作る技術ってぇのは、普通は様々な技法や知識を学んだ上で実際に体験して身に
つけるまで相当な時間を要するものだが…
ここではその技能を能力として持つと案外簡単にその品を精製する事が出来るようだ。
そうだな、あれはえーと…変化の魔法に近いというか。
作り手が作りたいものを頭ン中で考えて素材を手にすると、素材がその組成を一度解いて
作り手の作りたいと思っているものへと変化するって感じ。

毎度作製する度に『魔法みたいだな』なんて自分でも思うくらいだ。
とはいえ、やはり気力と体力も意外と消費するからか一日に作製出来るのは３つが限度で、
３つ作るともうぐったりしてしまう。腹も強烈に減る。

経験を積んで技術鍛錬をする事で素材の強さを引き出す能力が上がるってのも面白いが
その鍛錬には金がかかる。
グレンが優先的にオレの技能をあげるのにパーティ内資金のやりくりを上手く調整して
くれるのはありがたい事だ。礼を言っても多分

「パーティに有利に事が運ぶからな。投資して当然だ。
　無論その分しっかりと働いてもらってパーティに還元してもらうぞ」

と、眉間にしわ寄せて不機嫌そうに言い放つんだろう。
…アイツの言いそうな台詞って安易に想像出来るなぁ。


ま、それでパーティ皆の装備が充実するなら良い事だ。

しかし、武器や防具ならまぁ自分も色々見て来ているから頭ン中で想像するのは楽だが…
問題は女物の衣や防具だ。
オレは女物の服とかはてんで興味が無くてな。華やかなものなんてのは想像出来ん。


レクシーダの防具とか作るなら、ちょっと可愛げのあるモンにしてやりてぇんだがなぁ。
ああ、いっその事色気重視の品にしてもいいんだが！
それはレクシーダにはあまり合わん方向性だろう。


ふと、グレンに露出の高い鎧を作ってやろうとも思ったが、それをやったらアイツは
ネチネチと嫌味を理論づけて言ってくるか、黙ってブラッディファングを連発で撃ち
こんできそうなのでやめとこう。
真面目な奴は洒落がわからんからなぁ。




今までにない体験をオレはこの世界で体感している。
誰かと共に行動し、寝食を共にするのは久しぶりのような気がしてならない。


…いや、何故そんな風に思う？
オレは今まで世界を渡る旅を続けてはいたが、








誰かと行動を共にした事等ないはずなのに。

グレンは適当な態度で言葉を返した

すっと間合いを離して

…

……

………

夜遅く、ヒルダとかいうエンブリオがやって来た

突然ヒルダから漏れた人の言葉

用心深く辺りを窺うが、やはり人の気配は無い

グレンは否定の世界で出会った女を思い浮かべていた

バレバレ。

そうなのかもしれなかった。
少女はそれほど器用な方では無かったから。

だから、少女は嬉しかった。
この青年から無作為な善意を向けられる事は、決して心地悪い事では無かった。

少女はこの青年に話す事にした。
自らの事と、決意を。

そう、でも。

満の影が動き出す