生ける屍から敗走した先で、一息つく。

正常な精神があるかどうかもわからない相手に、精神魔術で攻めるのは無理があったともいえる。

あのまま続けていれば、いずれは倒せたかもしれないが、それでは相当時間がかかってしまう。

あの場は撤退して別のルートを探した方が、結果的に時間の短縮に繋がると思ったのだけど…。

このあり様である。

記憶を頼りに元の道を辿っていけば、元の場所には戻れるだろうけど…。

思わず、困惑混じりにため息をつく。

とりあえず、一度どこかで腰を落ち着けなくてはならない。

困ったことは、もう一つ起きてしまっているのだから…。

ロッテの口調と一瞬見せた表情は、シオンにそう思わせるには充分な代物であったようだ。

特に疑っている様子はない。
…むしろ、ただひたすらわたわたと慌てているだけで、それどころではないのかもしれない。

慣れない格好のためか、足元がふらついている。
抱きしめられているうちはまだいいが、急に手を離されでもしたらそのまま倒れてしまいそうだ。