可能な範囲で、遡れるところまで資料を絞り込む。
一番古い時代のものとして有力なのは、遠い分割世界の伝承に残る
『羊飼いの星』という逸話だろう。

『羊飼い』と呼ばれる存在が、
大量の『羊』を連れ各地の世界を食い荒らす、といったタイプの詩吟だ。
伝承としては非常にオーソドックスなタイプといえる。
この型の伝承は各地に似たような逸話があり、特別、奇異な点はない。
食い荒らされた世界は草の一つも残らないほど、荒れ枯れ果てる。

ここで着目すべき点は『星』という単語だ。
分割世界各地を『遊牧』し『食い荒らす』羊たちが、なぜ星と呼ばれるのか。
その答えはかつて私たちが遭遇した危機が示しているように思う。
つまり、ウィンターミュートと言うあの存在。
あの黒く禍々しい空から落ちてきた星、あれこそが『羊飼い』なのではないだろうか。

伝承にはこうある
『羊』たちは、『羊飼い』さえいればどこにでも現れると。
それは『羊飼い』が『羊』を無限生成するからだ。
とするならば、『羊』を産み育む『羊飼い』は『羊』達にとって『母』であり、『羊』達が存在するための分割世界そのものなのだろう。

そう仮定するなら、『羊飼い』との戦いは1つの世界を相手取った戦いということになる。
考えただけでも相当な困難が予想される。
私はその困難に立ち向かった実例を2つ知っている


1つは原始ニューロ達を誕生させた世界での話だ
その世界では、『羊』達の戦力を脅威ととらえ、それに対抗しうる戦力としてニューロを誕生させた。
牙ある『羊』に対し、番犬を差し向けたのだ。
しかし、結果は敗北。
『羊』の牙は、番犬を踏み越え、その後ろで震える飼い主の胸へと突き刺さった。


2つ目はメルンテーゼでの戦争
飼い主を守れなかった番犬たちは、私たちの先祖と共に狩人を作り上げ、猟犬となることを選んだ。
狩人に指揮された猟犬は『羊』達の群れの中に道を作り、狩人の銃は『羊飼いの』胸に大穴を開けた。


そして、また苦難は訪れようとしている。
次の戦いに狩人はいない。
また、犬たちだけに頼る戦いとなってしまうだろう。
そうなれば、私たちは、かつての番犬の飼い主と同じ末路を辿るかもしれない。

私は準備を始めようと思う。
かつてのニューロたちの姓を受け継ぐ者として。
かの世界でのもっとも有名な処刑人の姓を継ぐ者として。
私の敬愛する犬たちと、ついでにこの世界が少しでも救われるように。

呼称は……
そうだな、かつての過ちを繰り返さないためにも
『牧羊犬作戦』とでも名付けようか。



△月◆日　ノワール・サンソン・ディベール

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※今回の日記は半分くらいENo.1741・トムの中の人に書いてもらいました。

ごそごそとかばんから小さな紙袋を出すとノエルに差し出す。
中からはアーモンドの香ばしいかおりが漂ってくる。

ノエルが袖をまくるのを見て、じーっとみている。
見よう見まねでわからないように隠しながらこう？と言ってまたぷにっ、と腕をぷにる。

ちょっと最近ぷにぷには気になるようで、引き締めにかかりたいようだ。