「もうすぐバレンタインデーだねっ。」
「……あ？」

若干浮ついた調子のねこっぱちの声に、九が眉根を寄せる。

「イチジクは〜、何をするつもりなのかなっ？」

ねこっぱちは水色の瞳をキラキラさせながら様子伺いをする。

「バレンタインデー……だと？」

ふわふわの前髪に隠れたこめかみに立つ青筋に気がついたねこっぱちが慌てて逃げようとするが時すでに遅く。

「おまえは毎回毎回性懲りも無く！恥ずかしくねーのか、株式会社魔界の社員のくせに『愛の日』とかに踊らされやがってぇ！」

ねこっぱちの両頬を伸ばせるだけ横に伸ばす。

「そもそも、オレから何かもらえると思ってんのか？ずーずーしいんだよ、エロねこぉぉぉ！！」

伸ばしたまま、ブンブン揺する。

「おまえが期待するもんなんて、オレは何一つやんねーぞ！」

そう言ってやっと手を離す。

「……どっちにしろ『オレ』に期待してるわけじゃねぇんだろうけど。」

一生懸命頬をさすっていたねこっぱちは、きょとんとする。

「それって、どういう………」
「うっせ！死ね！」


それから2日ほど九はブンむくれのままでだった。