「やっぱりさぁ！時代は川だよ、か・わ！！なぁ、ねこっぱちくん！」


九は大仰に頷くと、なんともご満悦な表情でねこっぱちの背中をバシバシ叩く。
叩かれたほうのねこっぱちは、なんとも迷惑そうな表情で咽っている。

「そもそもさ、あの山は、何だかおかしかったんだって！」
「そうかなぁ？」
「だって普通じゃないだろ、あんなピカピカしてんの。」
「綺麗だったじゃない。」
「ったくぅ、ねこっぱちくんはわかってないな・・・・・・」

九が呆れたように大げさに頭を振る。

「オマエねー、わかってんのぉー？オレたち悪魔だよ？」
「そりゃそうだよ。」
「悪魔のオレ達が、あんなキラキラしたところに身を寄せて居心地いいはず　無　い　だ　ろ　がっ！ボケ！」
「えー、そうかなぁ。」
「絶対にパワー半減だったね！」
「単純に、イチジクが気を抜いて戦っ・・・・・・あだっ！」

ねこっぱちが頭を抑える。
九は何事も無かったかのように続ける。

「そうじゃなきゃ、あの敵、何であんなに悪運強いわけ？何でオレ達がボロボロにならなきゃならんの。」
「だから、イチジクが適当に・・・ふみゃ・・・・・・まだ何も言ってないのに！」

ほっぺを抑えて抗議するように九から距離を置く。
九は、そんなねこっぱちを冷たく一瞥するとため息混じりに呟いた。

「それに・・・・・・変な夢ばっか見たし。」
「ん？変ってどんな？」
「どんなって、オマエが・・・・・・」
「ボクが？」

真ん丸な水色の目が瞬きもせず、九を見つめている。



闇の中、薄く光を帯びる瞳。

ギザギザの——。



頭がぎゅーっと引き絞られるような痛みと共に、急に足元がおぼつかなくなった。
貧血を起こしたのだと気がついたときには、九は地べたに座り込んでいた。

「ちょ？！なに？どうしたの？」

急いで戻ってきたねこっぱちに、大丈夫だからと腕を上げて静止する。


「・・・・・・とにかく、川に戻って来て良かったって事だよ。」
「そう、なの？」
「そうだよ・・・・・・・・魚食うぞー！おー！」
「お、おー？」
「契約とるぞー！おー！」
「おー！」
「給料上げろー！」
「おー！」


何だかよくわからないが相方につられてコブシを突き上げるネコっぽい悪魔。


・・・・・・なんとなく誤魔化せたのかな？
九は若干青ざめたまま、ほっとしたように唇を歪ませて笑った。