■⑨のひ。

　俺は、愛用の若葉色のパッケージにあるタバコを一本取り出し火をつけた。



　・・・・・・・・・。



　ん？　なんだこれ？

　空に一枚の文字の書いてある紙が舞っているのが見える。
　誰かが残したメモだろうか？
　情報機密をそのまま放置しておくには無用心だ。

　いつもならそのまま放置するものだが。

「・・・なんだ？　暗黒？　10か条？」

　タイトルの一部に何故か共感を感じた俺は紙を取ろうとするが、
　風が舞っていて上手く取ることができない。
　とっさにアイアンスピアで叩き落とそうともするが上手くいかない。


　ちっ、難儀なものだ。


　仕方が無いから俺はエンブリオの力を借りることにした。
　同じシルフなら風の誘導もたやすいはずだ。
　案の定、すぐに紙は俺の手元に入ってきたのである。

「よし。」

　最初からこうすればよかったかとか思ったが、それは後だ。
　とりあえず、中身を見ることが大切だ。
　凄い内容が書いてあるに違いない。
　そんなトキメキを俺は感じつつメモに目を通した。



　　●攻城戦は負けるものだと思って参加する
　　●攻城戦にいいところを一つでいいから探す
　　●対戦相手であろうとなかろうとPKの回避を願う
　　●勝った日は取引掲示板（木濡れ日）をはしごし、これが最後かもしれないと噛み締めながら観る（参加はしない）
　　●そのうち超大物のドロップが落ちてくるハズだと信じる
　　●相手モンスターが高ランクの日はいさぎよく負け一揆を確信する
　　●エンブリオの成長を何よりの楽しみとする
　　●「今日から全勝したら最強や」と言ってみる
　　●どうしても辛くて我慢できないときは六命（偽島）時代の結果を観る
　　●毎週日曜日以外は「今日は絶対負けない日」と心穏やかに一日を過ごす



　・・・・・・・・・。



　俺は何も声が出なかった。
　ただ、静かにもう1本、若葉色のパッケージのタバコを取り出したのであった。