今から五年ほど前。
羊族の村、スエトニアの近くの森に狼が出るようになった。
村を出た羊族の何人かが食い殺されるなどの被害に遭い、狼は討伐されることとなった。
指揮は領主の息子が取り、彼のお抱えの者たちが集められた。
そこに羊族の戦士も多く加わり、その中にエメリーの兄、エリックがいた。
出発の前にはスエトニア村総出で、戦士たちを見送った。
エメリーは兄に挨拶をしたが、それきりであった。
時々休みで家に帰ってくるのと同じようにそっけない挨拶だった。
そして兄は二度とエメリーの前に姿を見せることはなくなった。

狼は予想以上に手強く、戦いに出た者の多くが死に、
誰もその様子を語ろうとしなかった。
領主の息子は深い傷を負い、そのまま遠くの城へ運ばれた。
羊族の戦士で生き残った者は一人としていなかった。

暑苦しいのは嫌だが、毛刈られも不快。
我慢して大人しく刈られても、その毛がワゴンセールで買い叩かれるなんて尚不愉快。

夜、鳴子がジーヴへと近づいてきた。