領主の姪が、初めてスエトニア村を訪れることになった。
村人たちは歓迎のために、催し物を供するように命ぜられた。
姪はまだ幼いということで、村の子どもたちによる演劇を見せようと決まった。
作劇を指導したのは、エリックとエメリーの父である。
彼らの父は角だけでなく身体も細く、ひ弱な男だった。
そのため、村の者からは役立たずの評を得ていた。
しかし旅芸人の出であり、芝居には長けていた。
題目は羊族に伝わる神話『伝説の金羊毛』—
—を、短く児童向けに脚色した話である。

スエトニア中の子どもが一か所に集められ、配役を当てはめられている最中だった。
主な登場人物は、人間国の「王子」と金色の羊の「戦士」の2人。
同じ年代の中でいちばんの大将が、王子の役をやりたがった。
子どもたちの間で決まったはずだったが、大人たちはそれを断った。
大将は体が横に大きすぎた。羊族はあっという間に太る者が少なからずいる。
村の大人たちは誰に王子の役を任命するかで一日ほど悩んだ。
領主の姪と同じ年頃の、できるだけ見た目の良い子がなかなか見当たらなかった。
そんな中、いつもは家に閉じこもっているエメリーも珍しく参加していた。
王子役はこの子にしましょう。
城からやってきた使いの者が、エメリーを指した。

ジーヴの荷物から覗いている本の事のようだ。

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