それは圧巻だった。
殆どが横1列に並んだ、見るからにタフそうな怪物たちの群れ。

数でも参加者を大きく上回るその相手に対して
臆することなく挑んで行く。

紗智が余り手を出す暇が無いほど、参加者の火力は凄まじく
瞬く間に半壊し・・・そしてあっという間に全壊させる。

一転して、凍りつくような雰囲気になったのは
拍子抜けだったねと、遠足の様な軽い雰囲気で話しながら
2手に別れて下山する途中の事だった。

メルンストゥーラ。
賞金首が何人も農場へと送られて行く中
依然として最大の人数を誇る集団。

その集団がコインを投げ、裏になった場合
相対した者は・・・

ただし、この場にいるのは牙無き哀れな羊ではない。
襲われることに怯える者は一人もおらず。
狩るか狩られるか、双方の立場の違いを明確にする為の一戦が始まった。

先手を取ったのは、メルンストゥーラだった。
初手に魔力を集中させる・・・その手を読んで止めようと
放った攻撃をかわし、逆に攻撃を放つ。

最初から大技の応酬があり、両者負傷する展開となる。

ここから紗智は動きを変える。
先ほどの山岳の動きを見ていても、火力は十分。
ならば自分のすべきことは・・・

只管に、前列へ石の壁を召還し攻撃を凌ぐ。
凌ぎきれば何とかしてくれるとの期待を持って。

死闘の結果、最後まで立っていたのは紗智達だった。

尚、爆散してしまったと思っていた重曹が弱々しい声で
集めれば治るというのに驚き、皆で集めて復活したことと、
そのどさくさにまぎれてメルンストゥーラの面々は
もう姿を消していた事を追記しておこう。

※重曹を集める際にアルヴィンと薙疾が箒で
チャンバラごっこをして紗智に怒られた事は秘密である。

う〜ん……と尻尾をゆらゆら考えながら

「着付けを手伝って頂けるのですか？」と問われると
首を傾げて紗智を見つめた。

冗談だと言われてもあいも変わらず首を傾げたまま
大人しく相手が着付けを終えるのを離れて待っていた。

３０分後うつらうつらとしていたアルファが声をかけられ顔を上げる。
紗智の姿を一目見て、まじまじと見つめた後感嘆した。

そういうとぶつぶつあれやれこや確かめ呟きながら
周囲をぐるぐると回り出す。幸い胸元には気づいていないようだ。

なでてもらえるの、うれしい、と続けて。