急な山道を登る休憩地点で、以前に作ってもらった明太ポテトのチーズ焼きを頬張る。
日持ちする様に作ってもらった事で、味が落ちるのを懸念していたがどうやら杞憂だったようだ。

重厚なポテトをまろやかなチーズが包む事でボリューム感を演出し
明太子のほんの少しぴりっとする辛味と甘みがアクセントに・・・
あっという間に平らげると、紗智は体に力が漲るのを感じるのだった。


本日の同行者は甲冑に身を固めた騎士であるフーキと、
竹槍を持ち、一揆を体現するような様相のタゴサークである。

山道を登ろうとしたところ、２人と出会い同行させて貰う事になった。
重装な騎士と己が肉体が鎧とでも言えそうな農民という
如何にもアンマッチに見える２人だが、不思議と相性が良さそうに見えた。


道を進んでいくと、行く手を遮る相手が現れた。
立ちふさがったのは如何にもといった巨体のトロールを筆頭に
オコジョと、空を飛ぶクラゲの様な生き物だ。

まずは頭数を減らそうと、巨体のトロールを尻目にオコジョに向かって
騎士が鋭い突きを放つのが口火となって戦端は開かれた。

予想されたとおり巨体のトロールの一撃は重たそうだが、
鈍重な事もあって気をつけていればなんとか回避できそうに思えた。

最初の攻防でトロールの攻撃を全部避けた事に
油断があったのかもしれない。

あまり鋭くないクラゲの一撃がフーキの体の自由を奪う。
避けるのが一瞬遅れたその隙に、トロールの重たい一撃が叩き込まれた。
鎧がひしゃげるかのような鈍い音ともに山肌に騎士が叩き付けられる。
なんとか立ち上がるも、無理はさせられない状況なのは一目でわかった。

大振りを通さないよう、タゴサークと二人で前に立つ。
騎士の眼はまだ死んではいない。
諦めないその視線を確認すると、回復を飛ばしながらまた敵へと向かうのだった。

ともあれトロールが１匹倒れる頃には、フーキもある程度持ち直し
後は殲滅させるだけとなった。

ただでは負けないという意志の様なものを感じ取った紗智は
自分にはその様な譲れない物があるのだろうかと思いを馳せながら歩みを進めるのだった。

上空から一匹のエンブリオが声をかけます。

そういいながらあなたを見回します。

にっこり笑って手(と尻尾)を振って

紗智さんが強い事は分かっているのですがやっぱり怪我は心配なのです

紗智の話をまじめに黙って耳を傾けている。

ぶつぶつとあなたの言葉を反芻しながら、扇子の作り方を覚えていく。

聞き終えると、こくこくと頷いた。

ファイにとって発音しにくい単語が含まれていたようだ。
それでも失礼にあたることには変わりないのだが。