少し前まで、ちょっとしたミスで転送事故があり、私は絵本の世界という場所に暫く滞在する事となった。
　なぜか、絵本の世界に飛ばされていた天津国九郎君も一緒だったので、連帯感みたいなもので不安がなかったのは良かった。
　元の世界へ戻る座標はフォルテのお陰で簡単に見つかったため、特にメルンテーゼでの旅に支障をきたさなかったのが救いだ。
　絵本の世界での二週間は、こちらの世界では一日分だったらしい。　
　とても得したような気分になったが、よく考えたら身体は普通に歳をとるのであんまり嬉しくなかった。

　自分の転送事故のデーターを元に、兵庫さんに起こった転送事故の原因を検証してみると、意外と共通点がありそうな事に気がついた。
　絵本の世界に呼ばれたのは、私の弟子と名乗る自称女神の力だったらしい。
　「高位の魔力を持つ物であれば、縁を持つものを世界に呼び寄せるのは造作のないことなんですー。」と自慢してた。
　つまりは、兵庫さんに何らかに縁がある高位の魔力を持つものが、兵庫さんを召喚したという事も考えられる。
　道産子さんが一番兵庫さんに縁がありそうだが、どうみても魔法使いより格闘家路線だし、道産子さんにそんな力があってもメルンテーゼに滞在する理由がない。
　恐らく、彼が原因ではないだろう。
　兵庫さんに縁がありそうな、高位の魔力を持つもの……それを探し当てるのが私の仕事になりそうだった。
　観測さえできれば鑑賞できるって、どっかの高知能生物が言ってたので私もまず、兵庫さんに魔法をかけた者を観測することから始めよう。
　そうすれば、兵庫さんをこの世界に留めておく原因も解明できるはずだと。
　
　でも兵庫さん、誰にそんな恨み買ってるんだろう。
　むかし振った彼氏が天使とか悪魔だったんだろうか。

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