相手が死霊とは言っても所詮下級死霊。
ただの動く死体にすぎないそれを、手当たり次第になぎ払い死霊術師の男との距離をつめる。
しかしあと少しというところで逃げられてしまった。
いや、しかし相手は手を抜いていたようにも見えた。
それがまた気に食わなかった。

*----*----*

傷の手当をして再び歩き始める。
しばらく進むと、通路の先から光が見え始めた。
普段ならなんとも思わない光にも、今なら少しだけ好感が持てる。
さすがにソウハみたいにはしゃいだりはしないが。
急ぎ足のソウハに手を引かれ光の方に向かうが、途中でその足がピタリと止まる。
先を見ると死霊兵士が数匹、出口を塞いでいた。
さすがにあれだけやったのだから、出入り口が塞がれるのは当たり前。
むしろ今まであれだけの数にしか出会ってないのがびっくりなくらいだ。

幸い敵はまだこちらに気がついていないが、さてどうしたものかと身を隠してソウハと相談する。
迂回する道はない、もどるのは危険・・・となれば正面突破しかない。
ソウハも同じ考えのようで、奇襲して正面突破する作戦で決定した。
しかし、どう奇襲しようかと思考をめぐらせる。
隣でソウハがぶつぶつ呟きながらガサゴソしている。
拾い集めた石やらを手に持ち、なにか細工をしているようだ。
そしてそれを敵に向かって・・・投げた。

あまりの意味の分からなさに思わず小さく声が漏れる。
しかし投げられた物体は敵には届かず、途中で消失した。
一瞬後、出口の方から物音がした。
それを確認したソウハがさらに物を投げる。
投げられた物は同じように転移し、あたかも出口の方から投げられたように見える。
何回か同じようにを繰り返すと、死霊兵士は物音の正体を掴もうとこちらに背を向けた。

そのタイミングを見逃さずソウハが奇襲し、敵に一撃を加える。
ゆっくりと振り返る死霊兵士たちにダメージは見られないが、身体のところどころが凍って動きが鈍っている。
どうやら有利は取れたようだ。

ソウハの作戦に素直に感心しながら、体勢を万全にする。