川辺で少し休息していた私達だったが、ヘリヤの悪ふざけで私はびしょ濡れになってしまったので、着替えるために一人宿に向かっていた。

「ヘリヤにも困ったものですね・・・・・・。
　まぁ、でもあの子らしいといえばあの子らしいのですけども、ふふ。」

ヘリヤが来てからもう一ヵ月程になるが、あの子が来てから子供達もとても楽しそうにしていて
子供達の中でのムードメーカーになっている。

あの身なりからして恐らく、貴族・・・それでないにしても不自由ない生活をしてたのだろう。
多少我儘で物知らずな部分も合点がいく。

でも、私はヘリヤの事が好きだから、素性なんて関係なかった。
ヘリヤがどんな子であろうと、あの笑顔だけは失いたくない。
私自身もあの笑顔には救われているから。



ともあれ結局、そのヘリヤのせいでリヴァランとの話は途中になってしまったので、問題は山積みであった。

「一番はやっぱり監視・・・いったいどうすればいいのでしょうか？」

——神父様がいてくれれば。

ふと、神父様の事が脳裏を過る。


「・・・んっ」

わかっている。もう神父様はもういないんだって事くらいは・・・。
わかっていても胸がずきりと痛む。

でも、これほど自分が神父様に依存していたなんて思いもしなかった。
もういないからこそ、思いが膨らんでいる、そう捉えることもできる。

「私は神父様に心からお慕いしていました・・・。
　これからも、この先も、ずっと貴方をお慕いしております。」


——神父様、もしも私達を見守っていて下さるのなら、どうか、どうか、教えてください。

「私は、この先どうすればいいのでしょうか・・・。」

天を見上げ祈るように目を閉じる。
太陽の光は、思った以上に眩しかった。


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目を開けると、そこは先程歩いていた場所とは違っていた。
何もない、真っ白な風景。

「此処は・・・？」

周りを見渡すと、遠くの方にうっすらと人影が見えた。

「誰・・・？」

恐る恐る近づいていくが、途中に崖がありこれ以上近づくことはできなかった。
そこから目を凝らし、その人影を見ると見慣れた人影。

「・・・・・・あっ」

神父様だった。
何かを喋っているが、遠すぎてはっきりとは聞こえない。

「神父様！！私は・・・私は・・・いったいどうすればいいのでしょうか？！」

向こうにも聞こえていないのか、永遠と何かを喋っている。

「私は、貴方の事をずっと・・・ずっと！！」

言い終わるより前に神父様は向こう側で笑っていた。
そして、あたりが光に包まれていった。

「神父様の事がす・・・・・・」


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気づけば私はさっき歩いていた場所に立っていた。

「夢・・・？白昼夢・・・？そんなまさか・・・。」

これほどはっきりと覚えてる夢があるのだろうか？

でもなんだが心がすっきりした。
きっと聞こえなかったかもしれないけれど、最後に思いを告げられたからだろう。
ほんの少しだけ、前向きになれるような、そんな気持ち。



「くしゅんっ！」

そういえば濡れたままだった。早く宿で着替えないと、風邪を引いてしまいそうだ。

目の前のシスターの言葉がまた怒気を帯びてきたので、慌てて説明する。

だんだん声も小さくなり…もはや平謝りだ。

ふむ、と相槌を打ってから

申し訳なさそうに右手を前に出し、謝罪のポーズをする。

　

にこーと笑みを向けた。

　

地図を覗き込んで、自分の宿からの位置を指差し確認し始める。

マリアが首を傾げたのにはにっこりと微笑んで答えた。

シスターの呟きは確かに耳に届き。しかし、表面上は聞かなかった振りをする。
存分に料理できる時を待つのだ。

借金、という言葉を匂わせるだけに留め。
縫製依頼への色よい反応に心を躍らせた時、掌に柔らかい感触と女の匂い。それも極上の。

ともすれば熱くなりそうな身体を押さえ、柔らかい声を出すように努める。

野望を押さえ込み事務的な話を進めてゆく。修道女への笑顔の裏には、とっくに官能の火が灯っていた。

ぽつぽつと漏れ出てくるような言い方だが、少年は表情1つ変える様子はない。

相手に問うというよりは、自分に言い聞かせているような感じだ。
そして孤児院の話を聞くと、少しだけ語調が強まる。