久しぶりに、蓮華くんとお話してきた。
二人っきりで、寝る前にちょっとだけ。

蓮華くんのお父さんとお母さんはとっても優しい人……じゃなかった、狐さんなんだって。
すごく優しかったって、教えてくれた。

もともと人間だったお母さんが狐さんと一緒に暮らすために、人間をやめてでも一緒に居ようとしたんだって。
そんなおとぎ話みたいなロマンチックなお話も聞かせてもらった。

だからなんだね、蓮華くんがとても優しいのは。
私みたいによくわかんない、全然種族が違う子でも普通に接してくれるのは。
私が一人で混乱してたとき、蓮華くんが手を差し伸べてくれたのは。


私はどうなんだろう。
お父さんとお母さんにはずっと優しくしてもらってた。

あの日のこと、あの日からずっと部屋で震えてたこと。
あれは悪い夢だったって思いたい。

お父さんもお母さんも優しいはず。
そのはずなんだよ。



蓮華くんはずっと一緒に居てくれるって言ってくれた。
言って、くれた。


わたしには、もうかえるばしょがない。

指の関節を何度かいじると砂が一粒こぼれ落ちた。
不純物とかもあるらしい。

腰に付いたスカート状の銀紙をぺりっとはがす。
セロテープで貼り付けていたように見えるが特にべたついたりはしないようだ。
そのまま、頭の上には乗らずに洗面器に乗り込む。

左手首を右手でぱきんと折って、断面を眺めたりしている。
ギザギザのガラス質の断面は、よくよく見ると砂が挟まったりしているようだ。

そう言うとエステルは一歩下がって……

短い呪文と共に、金属の光沢を放っていた宝石は光を放つ剣に。
水色の宝石は湖を思わせる色のマントをかたどる。

そして誰もいない方向に一振り。
剣の軌跡を、水の波動がなぞるように追いかけた。

そして小さくつぶやくと、装備が宝石に戻っていく。
心なしか輝きを失った気がするが、気のせいといえる範疇だろう。

上機嫌に尻尾をぱたふりしている！

もふん、っと振っていた金色の二尾を差し出してくる。

アクスをぶんぶん振り回しつつ