—練習試合を終えて—

この瞳は見たことがある、と私は直感する。
不審がっている目。自分から異物を遠ざけようとする目。
少なくとも私には、彼女の瞳はそれであるように見えた。

事実、彼女の口から出た言葉は『そういうもの』であった。
そういう瞳をした人と仲良くなれた事は、数えるほどしか無かった。
私の通っていた学校でも。裏社会でも。こちらの世界に来てからも。
きっと以前の私なら、ここで彼女と話す事を諦めていたと思う。

——でも、今の私は違う。
ヘイアンに『命令』されたような、『人当たりの良い少女』なのだから。
彼にもうやめていいと言われるまで、そう在らなくては。

苦笑いを浮かべて、彼女の推論を否定する。
……自分の身分を明かした方が、信用してもらえるだろうか。
それに、これはあくまで私の予測に過ぎないのだけれど。

彼女の纏っている雰囲気は、ただの『拒絶』だけではない。
目の前の存在から感じられる威圧。それは強さによるものだと考えた。
だとすれば、一般の人間と受ける印象が違う事にも納得ができる。
なぜなら——拒絶したいなら、彼女は『そう』できるのだから。

自分の言葉を聞いたフィンの様子を窺う。
役に立てなかったしまあ悪かったかな、とは思ったが
フィンの言葉にカチンと来たようで

立ち去ろうとしたところで思い切り肩を掴まれ、驚きのあまり素っ頓狂な声を出す。

徐に視線を合わせてこようとする相手に更に困惑し、素早く顔を俯かせた。

視線を合わせるだけの行為だが、メンチを切られていると勘違いしているようだ。