新たに加わった赤目の少女——アラヤに警戒を禁じ得ない。
しかしソウハがいいというのなら、同行に異論を挟むつもりはなかった。
ソウハはどうやらアラヤの姉とやらを探すのに協力するつもりらしい。

胸中で一人、気を引き締める。
しかし、なにやら雲行きがあやしい。
と、いうのも、ソウハが人探しなら高いところから探せば楽だと言い出したからだ。

自然と顔がこわばる。
この場にいる三人とも翼をもっているのだから、そういう話になるのは自然だろう。
しかし……

腰から翼が生えている自分たちの一族は、例外なく空を飛ぶ力があまり強くない。
必死に頑張って低空飛行がやっとだし、滑空が精々だ。
それも着地のコントロールが難しい為、
余程のことがない限りは翼をつかってどうこうすることはない。
二人には出来て、自分には出来ない事。
馬鹿にされるかもしれない、咎鴉だからだ、翼が黒いからだと、言われるかもしれない。
それどころか、この場で見捨てられ、二人で行ってしまうかもしれない。
自然と一歩後ずさっていた。
この次の瞬間に訪れる現実から逃げたかったからかもしれない。
そして——




結局自分達は山登りをすることになった。
山登りの提案をしてくれたソウハには感謝するばかりだ。
山の中腹に差し掛かった辺りで、オコジョと雷鳥達に出くわした。
空を飛んでいれば面倒に遭遇せずにすんだのに、という声がきこえてきそうだが、
かぶりを振って気持ちを切り替える。
今はソウハを守らないと。
それと……今のところおとなしくしている、アラヤのことも。
さあ、日常を始めよう。