『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.07.20.10:10、とある書庫にて——


　マスターに嫌われてしまったのか。彼は戦闘と修理以外は俺を
避けているようだった。マスターには一切頼れない。

　古い記事のデータを捲る。紙媒体を模した光は姿形を変え、画像と文章を
宙に浮かび上がらせた。
　惑星『アース』過去の新聞記事だ。政治、経済はすっ飛ばし、事件や
対アース外生命体との戦闘を調べていた。
　記憶は焼き付いた記憶以外、消えてしまったのだ。過去の情報は
出来る限り欲しかった。


「おお〜。ツルギは勉強熱心なんだね」
　記事を読んでいると頭上から声がした。ぽちだ。マスターの所用で
マスターについて行って、別行動を取っていた。所用は終わったのだろう。
「少しでも情報は欲しいからね、特にマスターが執着しているディバイダーって奴。
ディバイダーって奴の情報は関係者でも一部しか閲覧出来ないようになってる。
あの様子じゃマスターは教えてくれそうにないし、判る範囲の情報は
少しでも欲しいからな」
「……マスターがディバイダーに御執心なので妬いていると？」
「違う。俺にはディバイダーに関する記憶がないんだ」
「そういや、君は大破して記憶が消えたんだってね」
「あぁ。奴の容姿と声だけは焼き付いている記憶があるんだがな……」
「ん〜」
　ぽちは身体をくるりと回転させた。
「君も大半は知ってる情報だろうけど、ボクが知っている情報を教えてあげようか」
「知ってるのか？」
「まぁね」
　ぽちは再び一回転。それがぽちの癖なのかと思ったが、人気がないか
調べているのだと後に気付いた。ぽちの丸い両目が光り、立体映像が現れる。
記憶にあるディバイダーの姿だ。
「通称、ディバイダー。本名、国籍、年齢不詳。性別は男性。種族は惑星『アース』の
人間。アースの軍人で階級は大佐。人型戦闘用ロボットのパイロットで
数々の功績を上げ、英雄とまで呼ばれた人物だね」
「彼の戦い方からディバイダーと呼ばれるようになった」
「そう。ここまではアースの一般常識だね」
「今は行方不明だと言われているが……」
　ぽちは翼の先端を振った。
「実際は行方不明じゃないんだよね。ここからお約束の秘密ってやつ」
「俺の記憶に残ってるのは英雄とは程遠い印象の男だな」
「そりゃそうだよ。ディバイダーは英雄をやめて、悪い奴になっちゃったからね。
彼はアースを憎み、アースの敵になったんだ」

　　　△　　土　▲
　　（　㊤　皿　㊤）　　がしゃーん
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　／│　　塊　　│＼　　　　　　　　　がしゃーん
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