おう、もうひとつだな。
…ほらよ。そっちの馬に渡してやりな。

へえ、馬に乗ってここまでなあ。
それじゃ、お前の出身のほうへはいつでも行き来できる距離なんだな。

馬の上から武器ぶん回して狩りとかもするのか？
楽しそうだな！

いやいや幾らでもやりようはあるよ？　私も弓術の心得はあるし。とはいえアンタの得手が弓でこっちが剣じゃ不利だしなぁ。射程内でアンタが撃ち出す矢を全部斬り飛ばしたら私の勝ち、とか。あ、当りそうならさすがに避けるし大丈夫大丈夫。

礼を言われるよーな事でもないよ。アンタが帰りたい、元の世界の場所さえ特定出来ればうちの同行者ならもう１人位連れて異界移動出来ないでもないから、どーしても手段見つからなかったらそっちに頼んでも構わない。私は自分１人、特定条件下じゃないとその辺りは不得手なんだ。ま、最悪の非常手段程度に覚えておいて。

礼儀正しい子は嫌いじゃないよ。シャル、か。ちょっとだけ響きが私の名前に似てるね。

感謝する。
——ふふ、よい毛並みじゃ。随分と愛されておるの。
主が "しゃる" を敬慕しておる気持ちが伝わってくるぞえ。

ふふ。呼び捨てても良いのじゃが、謙虚じゃな。
……"しゃる" で良いのじゃよな。どうも横文字の発音は苦手での。

くはは、素直な奴じゃな！
では儂はせいぜい、そなたに狩られぬよう気を付けるとしよう。

しかし、お主は猛き精神の持ち主には見えぬ。
いや、弱く見えておるわけではないぞえ？
生きるためなら何でもやるという心根は、ちゃんと見えておるからな。

じゃが、人同士の争いを得手にしておるようには思えぬ。
一揆を掲げて王を倒そうとする狂騒の輩とは、どこか違うように見えるのじゃ。
それとも、本当は何か深い野望をもって、この戦に賛同しておるのかの？

気にしてないからいいよ。
確かに僕は狼だけど、性質的には犬の従順さに近づくよう改良された種だし。

おにーさんは優しいね。
うん、意識的に感覚閉ざさないときつい時もあるよ。
でも慣れてるから大丈夫！
どうしても辛い時は静かな場所で暫く休むことにしてるしね。

え、頭が馬で身体が人……になるの？！！！？

って違うのか。なーんだ！
でももし本当に人馬だったとしても、頭が馬で身体が人だったら会話できないよー？

宜しくね、シャル。
馬で来てるってことはこの近隣の村の人？

や、やるならやるぞ！？なめるなよ！？

なんとかなった…

先に進めるみたいだな

お、なんか落ちてる

や、やるならやるぞ！？なめるなよ！？

…………おや……………なんだっけ…………多勢に無勢……………………だっけ…………ぴんちだね……………

……………………勝利の……ポーズ…………イェーイ……

誰かいるのか？

ふぅ・・・

・・・・何者だッ

き・・・、貴様あぁぁ！！兵士の休息を狙うとは卑怯なッ！！

防具が無くともそのような輩に負けはしないッ！！
うおおおぉぉぉぉぉぉッ！！

何！？俺なんかした！？？