http://half.bufferin.jp/if/gd_6.html

-------------------------------------------------



黒い森の魔女に勝てなかった。



慈悲のつもりなのか、魔女は何も奪わなかった。
グリゴリは何も失っていない。

代わりにたくさんのものが産まれた。

魔女への殺意。
力への渇望。
自分への苛立ち。
過去への後悔。

略奪されなかったのは同情されたからかと思えば腹の底から怒りが湧いてくる。
しかしそれを許したのは自分の無力さ故だ。力を持っていない自分という存在が許せない。

黒い森の魔女など、簡単に殺せなければならない。
それが出来ないという事は、自分も十把一絡げの人間に過ぎないという事だ。


特別な能力など何も持っていない、ただの人間。
それを認めてしまう事は、最愛の母が誇りにしていた息子はボンクラだと認めてしまう事になる。


母の名誉のためにも、力がどうしても必要だ。
そのためには奪わなければならない。
差し出させなければならない。

エンブリオから、マァムブから、他者から。
出せるものなら、何でも。

　　　　　　　（ごつんとひとつ頭を壁に打ち付ける）

そこまで言って、ごく個人的な自分についての話は、必要ではないし
会話の相手は特に興味もないだろうと思い直し口を閉じる。

　　　　　　　　　　（ごつん）

グリゴリの返答を聞きながら壁に頭を打ち付けている

コインの裏が出ないという言葉に少し意外そうに眉をひそめ、
自身も器用にコインをトスする。表、忠誠を意味するストゥーラ

　　　　　　　　　（ごつんとちょっと強めにあたまをうちつける）

・・・

＞寝る前のほうがいい

苦笑いするように、自虐的に微笑んだ。

ビブリオバベルは瞳を輝かせ、
あなたのその丸い飾板へと熱い視線を向けている。

慄きとも、好奇心とも取れる眼差しで、
あなたが取り出したコインを見つめている。

魔女はそれだけ重く言うと、立ち去った。

グリゴリの呼びかけに気付くと、ゆっくりと振り向いて応じる。

「心とお金に悪いですから、あまりこういう事はしたくないんですけれど。」
そう言って肩をすくめる。

身分、職業、感染症。
お人よしの彼女でも、考える事があるようだ。

一瞬声を詰まらせたものの、フョードルの無邪気な様子に困ったようにひとつ息をつき、口を開く。

　
　不穏な空気を他所に、モゴモゴと口を抑えられ言葉を封じられているマントが五月蝿い。
　そんな些末事を一切合切無視して。太歳は言葉を続ける。

　
　目を逸らすことも、目弾きすらもせず。まっすぐに。
　相手の動向を伺うような視線を投げかけた。

男の言葉に、足を止めて振り返る。

王城前。
ラルフを倒し、人を探している最中のこと。
自分にぶつかりながら、舌打ちだけで去っていこうとする男を睨む。

肩に手を置き、引きとめようとする。
もし避けるようなら大声で呼び止めるだろう。

睨みながら男の顔を覗く。
ん？　と訝しげな顔をしながら、まじまじと見た。

クリスティーナが回収したメガネを掛け、部屋に入ってきたエンブリオの言葉に最後まで耳を傾ける。

相席の客に世間話を持ちかけるかのように、
突然、通りがかった女が話しかけてきた。

幼い魔女は、宙に浮かんでいた。
奇抜なファッションと奇怪な言動から、色々な意味で普通ではない事が伺えるだろう。