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目が覚めると見知らぬ場所で倒れていた。


俺が居た世界とは異なるここは『メルンテーゼ』と呼ばれる世界らしい。
そして現在ここでは大規模な一揆が行われている。
新たな王が、この世界に存在する"エンブリオ" という生命体と契約を行うのに必要な"ネクター"という紅い花を根こそぎ奪い取り、独占を始めたことが原因らしい。

これらのことは全て、"エンブリオ"の"ドール"に教えてもらった。
ドールはこの世界に来て初めて出会った生命体だ。
何故だか知らないが俺のことを甚く気に入ったらしい。
名前が無いから付けてくれ、と言われたので『ヒンメル』と名付けた。
この世界について色々と知っているようなので、一緒に旅をしながら色々と助言をもらおうと思う。


当面の目標は元の世界への帰還方法を見つけることだ。

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ほぼ事実のみで構成された日記から視線を外す。
これは数日前に書いたものだ。
このようなものをつける習慣はなかったが、なんとなく始めてみようと思った。


もう一度日記に視線を戻し、最後の一文に指を這わせる。


"当面の目標は元の世界への帰還方法を見つけることだ。"


「……」


帰還方法を、見つける。

だが見つけたところで、俺に元の世界へ帰る資格はあるのだろうか。


マスターは俺に失望しただろうか。
アイツは俺のことを恨んでいるだろうか。
そもそも俺はもう一度会いたいのだろうか。


自分の感情すら、碌にわからない。





『んー……』
隣で丸くなって眠っているヒンメルが少し身じろぐ。


「……お前も」

——いつか俺に失望し、恨むのだろうか。




起こさない程度に、軽く髪をなでてやる。



「……すまない」




聞こえるはずのない謝罪を口にしながら。