一章続き。

「ザントマンさん…ごめんね……。」
胸辺りに強く意識を集中する、瞬間空間にガラスの割れたような音が響く。
「宜しかったのですか？せっかくの新規契約でしたのに？」
「……えと……繋がって……違うと感じたの。」
「相性ですか？」
感覚でしか伝えることが出来ないのがもどかしい。
「ヘイル〜アズ〜？そんなところに居ないでコッチで水浴びしましょう？」
「お嬢……少しは空気を読んでください。ま、言った所で聞きませんか……アズ様、その興味深い話は後ほどで……泳げますか？」
「私はちょっと……水は苦手。」
「畏まりました、ではお嬢様にもその様に」
そう言い残しヘイルお姉様が遠ざかる……良かった、この傷を見せる必要は無いらしい。

「そう、楽しいのに残念ね。」
「楽しんでる場合では無いと思いますが。」
「いいのよ、ア・ナ・タ　っが頑張るんですもの！それよりも今はコッチ！」
ローゼが鈍く黒光る石を取り出す。
「これは……確かアズ様が持ち歩いていた物でしたね。」
「そうなのよ！とっても楽で使いやすいしビックリだわ！」
「……その、"転移石"でしたっけ？それほどの物で？」
「本気の私までとは言わなくても。魔力を必要とせず、登録してさえいれば何処からでも飛び立てる……っと言えば解るでしょ？」
「それは確かに。だとすれば……高価な物で？」
「ざっと調べてみた結果は、アノ子がまず持ち歩くものじゃ無いわねぇ。」
「……お聞きになられますか？」
「いや、危険な物では無いし事を荒げる必要も無いわ。それよりも……どうやらいつに無く、アズちゃんはやる気らしいから用意してきなさい？」
——少しだけ緊張した顔つきで。
「分かりました、しかしやり過ぎないでくださいね、お嬢様。」
「平気よ、壊したりはしないわ。」
——いつものカリスマブレイクが悪い方向に働かなければいいが……。


完全につながりが途切れるのをしっかりと確認する。
何故か胸が痛む。涙が溢れる。
「……でも、これで良かったよね。」
そういえば、"解約"を行ったのも思えば初めてか……。
「？どうしたのサラちゃん？……そんなに頼りないかな？」
どうやら私の中に宿るエンブリオにはバレバレらしい。
「わかってる……でも、その一歩も……きっと大切な一歩になると思うの。」
サラちゃんはいつも何も言わない……でもきっと伝わったと思う。
「うん……頑張ってみる。」
深めの場所めがけ水に飛び込む……ひんやりと気持ちい。
(Ptmのへ)

Next...

剣を取り出し、浮かせる。普段戦ってる時同様、特に種も仕掛けもあるわけではない

小さいほうをもっていかれ、すごく困った顔。

こんなでっかい鎌はいらないのにどうすれば、と

残念、妖精は鎌をもったまま置いていかれた！

くーるくーるとアズの周囲を飛び回る。

（走り去る少女を前に、青年は追いかけなかった。否、追いかけられなかった。
体力に自信のある冒険者が空腹の少女に追いつけない訳がない。それに少女の予想通り、青年は走り去られたら追いかけるほどのお節介だ。青年に追いつかない理由はなく、追いかける理由はあった。）
（しかし追いかけられない理由もまた、あった。——「男の人が……」という少女の言葉。
青年は、お節介で馬鹿だ。しかし人の痛みは判るつもりで、その一言が何を意味するくらいには頭が回るほうだった。）

（考えてみると最後の一言も逃げ口上だったのかもしれない。……たとえそうでなかったとしても行っていいのだろうか？
自分が彼女の立場なら、果たしてどうして欲しいだろうか？）

7th later———七日後。

（ということで青年は、約束した場所に来ていた。……否、居たというべきだろうか。何せ少女は場所こそ指定したが時間は何も言っていない。だから青年は時間の許す限り少女との約束の場所に立っていた。待っていた。
もう一度言おう。青年は、馬鹿だ。）

（……と、そんな風にあなたの視線の先にこの前会った時のような笑顔を浮かべている青年がいる。幸か不幸か、まだ青年はあなたに気付いていないようだ。あなたはそんな彼に対してこのまま見なかったことにして来た道を引き返してもいいし、約束通りそこにいる彼に声をかけてみてもいい。）

驚いていた彼女にくすくすと笑いながら話を聞いていたが——
——"噂話"に興味を持ったのか、表情を戻して食い付いた。

ウィルトは　しんちょうに　あいてを　みている。