「つまり、どこかの国に領土として管理されている状態なのでしょうか。　そして、そこの
　警察組織が、この『東藤タカシ』を大量殺人の犯人として指名手配している、ということですね。
　……調査隊のことを、この男性が知っていた、というのはひとまず保留にしましょう」

「宝玉？　招待状。　……ゆらさんの保護者の方は、その招待状で島に呼ばれたのですか？
　差し支えなければ、その招待状とやら、拝見させていただいてもよろしいでしょうか。
　……ミアさん、あなたも『宝玉』、もしくは『招待状』とやらに心当たりはありますか？」

「……なるほど、そう、まずはお詫びせねばなりませんね。　みなさんがここに移動する際に
　くぐってきた円形のタイル。　あれは元から遺跡の中にあったものではありません。
　あれを設置したのは私達です。　……詳しくは町屋さんたちが戻ってからお話しましょう。
　　　　　　ですが、元の場所に戻る方法についての心当たりはありますので、ご心配なさいませんよう」

「……まずは、そうですね。　イチゴウがどれだけのことを皆さんにお話したか
　わかりませんが、我々と『遺跡』の関わり合いについてご説明いたします。
　……その前にカミシロ、という名前の日本人をご存知でしょうか？」

……柱の影には、扉が二つあり、イチゴウはそのうちの小さい扉に二人を招き入れます。
その先は教材準備室のような、雑然といろんなものが積まれた状態の小部屋になっています。
部屋の中に一歩入ると、少し頭が重くなったような感覚がありますがすぐにそれは消え失せます。

「ええと、私もこういうの初めてで、どう言ったらいいかわかんないんですけど、
　とりあえず落ち着いて聞いて下さいね。　さっきお二人の携帯電話を拝見させてもらいました。
　その、携帯電話の設定が間違っていなければなんですけど……お二人が認識していらっしゃる
　　　　　　時間と、今私達のいるこの時間がつまり、その、ずれてるんです」

「……ええと、要するにかいつまんで言いますね。　あなた方は、私達よりも未来から
　やってきた人間なんです。　したがって牧野瀬さんの遭難に関して、現時点で私達のほうから
　直接的なアクションを起こす事は出来ません。　ですが……何か間接的にできることがあるかも
　　　　　　しれません。　差し支えなければ詳しい状況をお聞かせいただければ、と思うのですけれど……」

町屋(478)からのメッセージ：
「あっ、は、はい」
　物陰と柱の陰から招く手を視線のみで交互に見比べ、少し慌てて、
「あっ……」
　　　　　　ポケットから取り出した小さなコインを、さりげなく物陰に転がした。

「あっ、あ、あ……ごめんなさい。すぐに行くから少し待っててくださいっ」
　物陰の方へ小走りに駆け寄り、コインを探すふりをしながらリリを上目遣いで見上げ、
「えと……どうしたのかな？」

「……遠足のしおり？」
　リリが手にしていた紙に気づき、見えた範囲から判断して首を傾げた。

ユウ(1739)からのメッセージ：
タカシ君の指名手配書？　……私は、彼が犯人じゃないって知ってる。手配書から目をそらして、センセイの言葉に耳を傾ける。円形の紋様のタイルとか言ってるから、きっと遺跡の……あの入り口の魔方陣のことを知ってるんだ。もしかしたら、島の事も。

リリさんに軽くおじぎして、もし見せてもらえるなら紙を見せてもらう。それから、手招きするセンセイの元に向かった。

映画の中にいるみたいな気分だった。それも、ホラー物の。逃げられない場所、どこだかわからない場所にいきなり連れて来られて、何かの実験台にされる。少しずつ私は私を失って、何もなくなってしまうような、そんな映画。

　首を振る。ここに集まった人達を見る。大丈夫、と胸から下げた小ぶりの短剣を撫でた。刃はついてない。それどころか、舞台の小道具として作ってもらったそれを触ると、少しだけ落ち着いてきた気がした。深呼吸を一つして、何ひとつ聞き逃さないって、先生の言葉に耳を傾けた。

ゆらゆら(1811)からのメッセージ：
ゆら（町屋の後に付き従って）