赤髪の女性が辺りを見渡しても、部屋には特に何かの目印となるようなものはありません。
コンクリート打ちっぱなしの壁には、時計やカレンダーなどは一切かかっておらず、窓にも
ブラインドが下ろされ、外の景色は見えないようになっています。（ただ、隙間から差し込む光で
　　　　　外はまだ太陽の出ている、昼間から夕方にかけての時間帯であるだろうことがうかがい知れます）

部屋の中には規則正しく並んだ長机と椅子。　机の下には荷物を入れる少し棚のように底部分の
せり出したスペースがあるようです。　椅子は、ごく普通の折りたたむタイプのものです。
眺めているうち、部屋の四隅に何か加湿器のような小さな機械が置かれているのに気づきます。
プラスチックか何かの透明な本体部分の中に黄色く光る石が透けて見えます。下にある排気口の
ような部分から薄く白い煙が吐き出されていますが、それはすぐに部屋自体の空気に溶け、周囲には
特に変わった影響を及ぼしてはいないように思われます。　目いっぱい手を伸ばせば機械の一つには
　　　　　魔法陣の中からでも手は届きそうです。　ただし『イチゴウ』に見つからない保障はありません。

「え、『私も聞きたかった』って……」
『イチゴウ』の表情が少し戸惑いに変わります。
「どうやってここまで来たか覚えてないの？　『ボウケンシャ』？　何のこと？
　　　　　　……ひょっとしてあなた、迷子になったよその国の遺跡調査隊、ってこと？」

「……あなた達はどうなの？　マホウジン……ああ、『ラーラインズ・ドア』ね。
　やっぱり……　あなた達二人は、剣の子と違って、マホウジンを移動手段として認識している。
　ってことは、あなたたちが原住民なのね。　『時空列の違うものが同時刻同地点に転送される
　　　　　　ようなことも場合によっては起こりえる』……カミシロ・レポートの通りだわ」

そう独り言のように呟いて黒板の前の少女に目を移し、『イチゴウ』の顔が青ざめます。
「ねえ、何なのあれ？　あなた達にとって何か意味のある行為なの？　お願い、やめさせてすぐに」

リリ(18)からのメッセージ：
リリは様子を眺めながら周囲の状況を確認する。まず机や椅子に触れ、材質が知っているものだと確認。触れた時に揺れて軽く音が鳴った。
『イチゴウ』と名乗る女性の話に耳を傾ける。「お茶」「コーヒー」。ある程度自分の常識が通じるところだとは知る。
そしてふと、見知った顔があることに気づく。
（……町屋、だったか）
だが彼女もあの島から立ち寄ったのだろう。それよりも、今は窓と出入り口、この部屋の外を確認するのが優先だ――

町屋(478)からのメッセージ：
「あれ……リリちゃん？」
　何時の間にか隣に立っていた少女を見て首を傾げた。

村娘(1348)からのメッセージ：
村娘「あ、あれ…？」
村娘「あ、す、すいません…ありがとうございます…お、お茶なら分かりますよ！コーヒーも！」
村娘「（一切の警戒もなく普通に椅子に座った）」

村娘「イチゴウ…お名前じゃないですよね…って、私も人のこと言えないか」
村娘「…えーと（周りの人を見て）」
さらに書き換えられた黒板に目を止め…見なかった事にした
私は遺跡から此処に迷い込んだんですけど…此処、何処なんですか？

ゆらゆら(1811)からのメッセージ：
シャノン「ええ、お茶もコーヒーも分かります。　おや、てっきり島の外に来てしまったかと思いましたが……共通認識のままなのでしょうか……それとも、言語や文化が近い物が集められたと考える方が自然？　いや、あの小さな魔方陣の作用で……？」
（暫く一人で呟き）

シャノン「助手、一号……ああ、あのボードに書かれていたのはそういう……って何か書き換わってる！」


シャノン「まあ来たのあの遺跡からですが。　元々、私とあの青い髪の彼女は外の世界から遺跡を訪れていましたから、原住民というわけでは無いですね」

シャノン「んー、呼び方ですか。　『島』に『遺跡内』、『遺跡外』と言ったところが一般的でしょうか。　よく考えると遺跡中心の呼び方ですね。　あとは、偽りの島『偽島』という呼び方も……あ、韮の島『韮島』という呼び方をしている人もいましたね」

シャノン「さて、他に質問はありますか？　こちらとしては……あの魔方陣はなんですか？　どうも、遺跡にあったコレまでの物とは様子が違いますし。　それと、ここはどこでしょうか？　おそらく、遺跡内……いえ、『一号』さんの話しぶりからして島の中ではないような気がしますが」

（白い筆記用具を元に戻し、手に付いた粉を払ったところでようやく、魔方陣から転送されてきた他の方々に気づき、魔方陣の方へ近づき）