暫しして客が途切れ、店主らしき男も所要で席を外した無人の香水店に、奇妙な姿の男が訪れた。
金属質の黒い外殻と、青白く光る二対の目。
並べられた香水瓶を長い爪の先に摘んで暫し吟味し、フン、と鼻を鳴らし
「なかなか楽しくやっているようじゃないですか。
しかしどれも刺激に欠ける。良い子ちゃんにはこれがせいぜい、ですかね。」
「……───おや、とっておきがあるじゃないですか。こんな隅に隠しておくなんて。
ふふ、どれ、並べておいてあげましょうか」
黒い怪人は隠すように置かれていた林檎大のポマンダーを摘み上げ、いつも店主が
新作を飾っているスペースに据えてしまった。

ステラ(167)からのメッセージ：
ステラ「あら、この新作…。
ふふ、セラさんおめでとうございます」

ジャンニ(354)の声は粘りつくように低く響く：
「……失礼。『グラン・マ』を買ったはいいが、肝腎の場面にゃ使えませんでしたよ。
　精進が足りねえなあ」
「ま、いい香水だ、あんまりブッソーなことに役立てるんじゃなく、
　プライベートで楽しませてもらいましょうかね」

フィス(1021)からのメッセージ：
赤い生き物がふらふらとやってきて棚の前に立つ。
それは空の瓶を握り、ゆっくりと去って行った。