ENo.896 ミリア・イグ・ルヲズ

イ｢第四回……では、水銀世界での物語の続きを話そうか。｣
……
…
その後、夕食をとるために研究機関に戻ったイアは驚くこととなった。
アイォウィ北西地区を案内されて戻ると、研究所内のレストランではなく、929の会議室に通された。
その会議室は、先ほど案内されタ時には普通の装いであったものが華美な装飾群に置き換えられており、とても同じ部屋には見えない。

その部屋の中央部には台が並べられ、幾つもの皿が所狭しと並んでいた。
イアは台の中ほどで待つように言われ、待っているとぞろぞろと人が入ってくる。
その容姿は多様なものであったが、ルシドやイアのように
どこかしらそれぞれの種族の一般的な姿とは違っていた。

入ってきたのは12人であり、この研究室の全てがここに集った。

ル｢今回の歓迎パーティーはここにいるイア君の歓迎パーティーである。
　イア君の任期は決まっていないが、しばらくはここに所属しているので
　ここで挨拶を兼ねて歓迎パーティーを開くことにした。
　さて、まずはイア君に自己紹介などをしてもらうとしようか。｣

イ｢あ、と、どうも初めまして、イアレーゼ・E・D・セルクという。
　気軽にイアと読んでいただければいいので、これからどうぞよろしくお願いするよ。｣

ル｢イア君は異世界出身なので、何かと不便なこととかあったらみんなからも助けてやってくれよ。｣

イ｢ってそれを言ってしまって大丈夫なのか?｣

ル｢ん？構わんさ、ここにいるものたちは皆、こちら側の者達だからな。
　上のように理知的であるふりをするだけで、実際は自分たちと違うものを排除しようとしたり、
　名目上だけの権利付与をして実際は私服を肥やしているだけの無能とは違うからな、
　それに、私がそういった類の者達に迫害される異質な容姿の者を好んで集めているというのもあるしな。｣

イ｢いわれてみればそうだが、どうしてそこまで一般的でない容姿の者たちに固執するんだ？
　そういった異端を集めると強制的に排除されると思うのだが｣

ル｢まぁ、何も実績がなければそうなっていただろうな。だからこそ、この研究室を造った。
　異質な部分を持って生まれた者には術理に対して素養のあるものが多い。
　それを利用して術理学に関する研究をして、やつらに実績を作って認めさせればいい。
　実際そうして認めさせることで、ここを存続させてきたのだしな。｣

12人はそれぞれの反応を示したが、全員肯定の感情を示しているようだった。

イ｢そうなのか、ならいいか…紹介にあったように自分は異世界からの来訪者である。
　種族は精霊…といえば分かるのかな?｣
(まぁ、いざとなれば脱出すればいいだけのことだしな)
イ｢この世界へは様々な世界を渡り歩いている途中によっただけの話…
　まぁ、よった世界からはその世界のいろいろなものを見聞きし、
　概念を収集することを目的としてるゆえ、しばらくいるが…ね｣

ル｢まぁ、話し出したらきりがないだろうからさっさとはじめようじゃないか。
　それではみんな用意をしてくれ。｣

みんなは思い思いの”杯”を”掲げること”をする。

ル｢それではイア君のこの研究室への所属を祝して乾杯。｣

一同｢｢乾杯｣｣

みんなは思い思いに食事や談話を始める。

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とりあえずこの世界の食事風景でも描写してみよう。
まずは飲み物の紹介からはじめようか。
この世界の飲み物は水銀に何かしらの物質が溶け込んだもの(あるいは分散したもの)である場合が多い。
分析してみると鉛や様々なランタノイド系列やアクチノイド系列の物質が入っている。
この中で酒と称されるものは、水銀以外にプルトニウムが主要な構成要素となっているようだ。
つぎに、食物類の紹介をしよう。
この世界の食物は様々な金属の混成体や合金のようなもので構成されている。
食物も飲み物も一般的に銀色味を帯びていることがほとんどである。
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｢精霊ってはじめてみた。｣

イ｢そうなのか…まぁ、実体を持てるものはごく一部だからそんなものか｣

｢精霊って普通は姿見えないはずなのでは?｣

イ｢ああ、術理的な干渉作用を応用して実体を取れるようにすれば、姿は見えるようになるし、
　実世界に影響を及ぼせるように精密な式を構築すればこんな風に物に触れたりもできるんだよ。｣

｢たくさんの世界を回っているというけど、ずっとその体なの?｣

イ｢いや、違うな。自分は元々が植物の精霊ゆえ、一つの姿しか取れないのであれば
　自分の元となった植物の形となるのが普通だが、
　自分はその世界その世界でどのような姿をとれば行動しやすいのかを調べてから
　物質化して、その世界を実体を持ってみて回るようにしているよ。
　そのほうが都合がいいしね。
　まぁ、でも体の一部に元々の特徴が少し出てしまうのが欠点ではあるが…ね。｣

｢異世界回るのって面白いの？｣

イ｢そうだな、初めはそうするしかなかったから苦行に近かったが、
　今は、いろいろあることを全てまとめて、とても楽しんでるよ。｣

｢僕らにも異世界を見て回れるのかな?｣

イ｢どうかな、誰でも異世界を回れるわけではないし、
　そもそもここのようにすぐに居場所が安定するなんてことはほとんど無い訳だしな。｣

その後も様々な内容の質問が出、その都度イアは答えていった。
逆にイアのほうも研究員それぞれにいろいろな質問をし、この研究室にある程度慣れてきたといえるのかもしれない。

それからしばらくの後、歓迎会は解散となり各々の帰路についた。

……明日からはこの研究室で生活することになる…まぁ、どうとでもなるさ