ENo.179 雑草王女

えにし「どうも。えと・・・みどり＆えにしの無駄にヒョロ長くてモヤシっぽい方、縁です。デュエルで負けちゃいましたけど、野盗戦はどうにか勝てて良かったです。これからも応援よろしくお願いします。次回、みどり＆えにし『Ｅｖｅｒｙｄａｙ　Ｙｏｕｎｇ　Ｌｉｆｅ　Ｊｕｎｅｓ』え？ちょっと、緑？この原稿嘘だよね？」

第８話『死に至りかけた雑草、そして』

　またしても、惨敗。
人狩りに襲われ弱っていた状態で休憩もせずに行った戦いであったこと。
ホワイトタイガーとパンダライダーという、現時点では手に余る強敵あったこと。
主な原因ということならば、そんなところか。
だが、項垂れている暇はない。
新たな戦いは既に始まっているのだ。
とはいえ、今回の『戦い』は常日頃行われているものとは少々趣が違った。

みどり「先にこちらを攻略して・・・ああ、ダメだわ。それだとこっちが・・・いや、それならいっそこちらから回り込んで・・・ここの間は強行軍になるけれど、仕方ないわね。人口密集地帯を突っ切るから身軽になってからじゃないと・・・」

「あら、精が出るわね。」

　何やら大きな地図を開いてあれこれ呟きながら書き込みを入れている緑の後ろ姿を見たライゼが、緑に話し掛ける。
この様子を見たなら、この先どのように移動するか、どの依頼をどういう順番で受けるのか、それを思案していると思うのが当然だろう。

「巨大ミミズ、巨大山猫、ギャングスター、全部強敵ね。その上この間のように人狩りに遭わないように気を付けつつ進まないといけないし・・・」

みどり「え？ああ、そうね・・・それならもうルートを割り出してあるわ。あと戦術に関しても、叩き台程度のものではあるけれど添付しておいたから、後で擦り合わせをしましょう。縁、出してあげて。」

　傍に控えている縁がライゼに資料を渡す。

「よく纏まってるわね。どの作戦も縁さんの耐久力頼みのような感はあるけれど・・・それだけ緑さんが縁さんに信頼を置いているということかしら？」

えにし「え、いやあ、ははは・・・」

　２ｍを超す巨躯を誇りながらも、それに似つかわしくない幼い笑み。
変身後のあの巨大な歩行雑草の姿を見ると忘れそうになるが、やはり１７歳の少年である。

「で、あれは何を？」

えにし「ええ、それが・・・」

「ツァオベラー・フェスト？何これ？凄く楽しそう！ねえねえ、みんなで行こうよ！」

　チャチャが緑の開いている地図を見て飛び回る。

く分割世界の様々な文化を集めた一大文化祭『ツァオベラー・フェスト』が開催されます。
これは生徒たちの異文化理解や交流を深めることを主な目的とし、
またその自立心や社会学習の向上を推し進め、さらには学校の宣伝も兼ねたイベントとなっています。

開催期間中は校内の空きスペースや各施設などが来客に開放され、生徒による有志の出し物や出店、イベントなどをお楽しみ頂けます。

「・・・少し意外だわ。緑さんだとこの手のイベントは敬遠しそうなイメージがあったのだけれど・・・」

みどり「そうね。ライゼさんの言う通りよ。私も本来なら人の多い場所は敬遠したいところだわ。」

「じゃあ何で・・・」

　緑がライゼの前に地図を広げて見せた。
赤マルを付けられたポイントの共通点に、ライゼはすぐ気付く。

『リンクス・リング「Cafe！」』『カフェ・オリュゾン　出張パエリアバス』『Miniature Garden（ミニチュアガーデン）』『移動喫茶リシーハット　魔女の大鍋と七つの壷』『コットンキャンディ（わたあめ）出店』『タコヤキ屋台』『メイド喫茶『羽の休息所』』

　いや、ライゼならずとも気付いたであろう。
そう、全て飲食店、或いはそれに類するものだ。

みどり「人狩りに遭って予想外の負傷を負ったおかげで森での戦闘にも敗北。今は最悪の状態にまで落ち込んだ体調を回復させることが急務です。ライゼさん、ＡＫＡＺＯＮＡＥの二人は自然治癒でどうにか賄えるとしても、私はそうはいかないわ。ＰＳもいらず、アイテムもいらず、掛けるものが手間と時間だけで済むのであれば、この機会に確実に体調を回復させる。これからの作戦が私の生み出す歩行雑草たち、そして縁の耐久力を拠り所にしたものとなるのなら、私の体調回復を極めて迅速に行う必要がある。でなければ、この先の依頼などこなせないわ。」

「それってただ美味しいもの食べに行きたいだけじゃないの？」

　ツッコミを入れたチャチャを一瞥すると、話を展開するでもなく緑は再び話を続けた。

みどり「まずは依頼の入っている生産行動を完了させましょう。ライゼさんは交渉がてら既に済ましているけど、縁とＡＫＡＺＯＮＡＥの二人は依頼者の所に行ってきて頂戴。その後は自由行動よ。文化祭で羽を伸ばすのもいいでしょう。」

「やった！自由行動だって！ＹＫＩＭＲＡ早く早く！」

みどり「・・・よく聞きなさい。羽を伸ばす前に羽を毟り取るわよ。まずは仕事を済ませてからと言っているでしょう。」

「済まんな。よく言って聞かせておく。」

みどり「お願いするわ。あとできればそろそろちゃんと会話が成り立つようにしっかり教育して頂戴。」

　ＹＫＩＭＲＡがチャチャを引っ張って行く。
ライゼは軽く苦笑いしながら、縁は相も変らぬ緑の対応に冷や冷やしながら、ＡＫＡＺＯＮＡＥの二人を見送った。

みどり「さあ、私たちもそろそろ行こうかしら・・・」

　緑が手を差し出すと、縁が跪くような格好でその手に触れる。
と、手と手が触れあっている所から、緑色の光が淡く漏れ出し、縁がみるみる巨大化する。

えにし「モッサアアアアア・・・」

　緑を手に載せると、縁が立ち上がる。

みどり「じゃあライゼさん、宜しくね。」

「了解よ。そっちも宜しくね。」

みどり「さて、少し眠るわ。目的地に到着したら起こして頂戴。」

えにし「モッサアアア・・・」

　かくして、絃繰緑はツァオベラー・フェストに向かった。

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えにし「モッサアアア・・・」

みどり「んっ・・・おはよう、縁。」

えにし「モッサアアア・・・」

みどり「ええ、おかげでよく眠れたわ。さて、じゃあいったん『解除』ね。」

　巨大な歩行雑草と化した縁は緑を地上に降ろすと、次第に縮んで人間の姿へと戻って行く。
跪いたままの縁の手に触れる緑。触れた手から緑色の淡い光が漏れる。

みどり「これで大丈夫ね。何かあったらすぐに呼んで頂戴。」

えにし「うん、わかったよ。緑も気を付けてね。」

みどり「ええ、わかってる。さて、マナを使ったらまたお腹が減ってきたわ。行って来るわね。」

　緑が一人でツァオベラー・フェスト来たのには理由がある。

「なあなあ、雑草王女って知ってる？」

「ああ、知ってる知ってる。何かめっちゃデカイ歩行雑草やろ？」

「喋れるとか聞いたことあるんやけど、ホンマなん？」

「マジで？歩行雑草って喋られへんのとちゃうん？」

「ああ、俺、アレやで、何かホンマは女の子があのデカイ雑草を操ってるとか聞いたことあるで？」

「それアレちゃうん？何かたまたま子供とか高い高いみたいにしてて、それで間違えられたとかちゃうん。だって無理やんｗｗ」

「せやな。都市伝説やな。」

　噂話をする一団の横を通り過ぎる緑が浮かべる微笑みは、自嘲から来るものか。
なるべく主観を交えず、冷静に判断するよう努めた上でも、雑草王女の名はどうやらそれなりに有名なものである。
しかし、その名の知名度とは裏腹に、その実態を知る者となると、極端に少なくなる。
今、この場に於いて、何人が気付いているだろうか？
自分たちのすぐ傍を通り過ぎる少女こそが、あの雑草王女であることに。

みどり「（計画通り。誰にも気付かれないわね。）」

　名乗らなければ誰にもわからない。
いや、名乗ったところで誰にも信じてもらえないであろう。
自身こそが雑草王女であることを隠し、実年齢が１７歳であることも隠し、そして、実際の食事量をも隠し、
見た目通りの１０歳の少女としてこの場を訪れることにこそ意味がある。
この場合、子供だからと何かしらのおまけをしてもらえるというメリットも出て来る。
緑はこの時点で自身の計画の成功を９割方確信していた。

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えにし「ツァオベラー・フェストって祭りがあるんだ。文化祭と万博を足して２で割ったやつだと思えばいい。ところがこの祭り、大演武もあるって物騒なシロモノでねぇ。そんな文化祭に入って、出店のレシピを探れって注文だよ。頼みにきたのが虹色天幕じゃ断れないよな。しっかし恐ろしいねぇ〜。次回『祭りへ！ツァオベラー・フェスト』でまた会おう！・・・って、これ絶対違うよね緑。」

みどり「あら、わかっちゃったかしら。てへぺろ（棒読み）大丈夫よ。本物の原稿もちゃんと用意してあるから。ホラ。」

えにし「大演武ってのは、荒っぽいのを通り越して殺人ゲームだね、本当。俺の目の前で一人殺されちまったよ・・・って、そんなはずないでしょ！！何平然と嘘ついてるの！怒られるでしょ！すいません！本当にすいません！」

みどり「ごめんなさい。ちょっとアイドルマスター（コブラ）の見過ぎでつい、ね。」

えにし「殺人ゲームだの目の前で一人殺されただの、そんな危なっかしい台詞が出て来るアイドルマスターなんて聞いたことないよ・・・ああ、すいません。何かもう色々すいません。」

みどり「意味の分からない人は『アイドルマスター（コブラ）』とか『スペースコブラ　次回予告』とか『ラグ･ボール』とかで適当にググって頂戴。ああ、もう時間が無いわ。次回、『雑草王女の食いしん坊バンザイ！〜知るかバカ！そんなことよりお食事だ！〜』でまた会いましょう。」

これでも一応
※『ツァオベラー・フェスト参加中！』
コミュ枠が増やせんかったんや・・・
これも全部貧乏（ＮＰ不足）が悪いんや・・・
ギギギ・・・