ENo.807 pecopecoPokoj

ある日、知らない路地からまた路地へ
猫を追いかけて森に迷いこんだ女の子がいました。

ここはどこかしら。

冬の花が咲き、足元は落ち葉のじゅうたん。
さく　さく　さく
しばらくゆけば、見えてきたのは大きな大きなビルでした。

「森にビルなんて不自然よ！」
だけど歩き疲れた女の子は、少しそこで休むことにしました。

階段を登ってゆくと、ある部屋の前にたどり着きました。
トビラにかかった看板には

pecopecoPokoj

と書かれています。

「ぺこぺこ…ぽこじ?」

女の子はトビラにかかったフシギな文字をそう読みました。

するとどこからともなく声が聞こえてきます。

るち「ちがうわ！　ペコペコポコイ。Pokojはある国のコトバで　へや　ってイミよ。」

足元から聞こえる鈴のような声。
うえきばちのはっぱのかげから青くながい髪がみえました。
それは照れ屋な風の精　ルツィエです。

るち「いらっしゃい、ペコペコポコイへようこそ。さあ、トビラをあけて中に入ってちょうだい。すぐにお茶をよういするわ。」

真っ青な空色のトビラをあけると
中は賑やかで　物がいっぱい
だけど可愛い　
そう、そこはまさに女の子のへやでした。

ブーツに飾られた花　レースのドレス。
林檎とシナモンの香りで包まれた空間。
小さな引き出しには　ひまわり　や　こはる　と書かれていて
あけてみるとまさにそんな色のマスキングテープたちがずらり。

中からはことことと音が聞こえてきます。
小さな妖精が　ミシンをふんで服を作っているまっさいちゅうでした。

ちーこ「いらっしゃい、今ワンピースを作っていたところなの」

太陽の精　チェコが手をふります。

ちーこ「よかったら、私の作った服をみていってちょうだい」

あんないされた部屋にずらりと並んだ可愛い服たち。
ポップでひらひらで　
おひめさまのようなドレスや
鮮やかな色でいっぱいでした。

「どれを着ようかしら♪」

女の子は鼻歌をうたいながら　つぎつぎに服を着ていきます。
どれもおしゃれで　選べない！
その中でも一番気に入ったのは茶色の花柄ワンピース。

「一目惚れ！」

するとそこになにやら　いいにおい。
ふらふらと歩いていけば　まるで絵本に出てくるようなキッチン。

るち「此処は私の自慢のキッチンなの。今丁度ホットケーキが焼けたところよ。」

妖精が二人で運んできたのは、まんまるなホットケーキ。
甘い蜂蜜と生クリーム、バターをつけてめしあがれ。

それは夢の様なとろけるホットケーキでした。
「こんなおいしいもの、初めて食べたわ！」
しあわせでほっぺがおちちゃいそう。

森の光が差し込む　大きな窓から景色を眺めて
女の子は至福の時を過ごしました。

「私もここに住みたいわ」

ちーことるち「それはできないわ。」

妖精の返事に、女の子は少し悲しそう。
そして妖精は続けました。

るち「でも、ここはぺこぺこポコイ。おなかをぺこぺこにしたあなたを満たす部屋。」

ちーこ「心もぺこぺこになったら、ここで心もいっぱいにしてあげる。」

ちーことるち「きっとまた会えるわ！」

ほっと一息
心を休めると
ほら、もう　***

光で目の前が真っ白くなってゆく。
霞がかった意識の中で、　妖精の小さくて優しい声が囁きました。

ちーことるち「おやすみ、明日もがんばれ」

目が覚めると、女の子はいつもの自分の部屋にいます。
慣れたベッドから起き上がると、首をかしげました。

「あれは夢だったのかしら。また、あそこに行きたいわ。」

朝ごはんのにおい。
ホットケーキです。

でも女の子はフシギなことにおなかいっぱい。
こころもいっぱいに満たされた気分でした。

花柄のワンピースを選び
お洒落をすると　女の子は出かけてゆきました。