ENo.3451 Tomas Waylight

探査記　初日
まず当探査記を記す目的について記す。
当探査記を記す目的はまず第一として今までとの生活習慣を維持するためというものがある。
規律ある生活。絶対のルールの遵守とは、すなわち日々の変わらぬ習慣の維持という基本から始まるものであると信じている。
おぞましいことにこの地では端をきっちりとあわせ折り込んだ新聞ですら入手に困難が伴うという。
朝食にボイルドエッグが手に入らずきっかり1gの加塩もかなわず
6時にキーパーの手によりアイロンがけされた新聞を、朝7時の馬車内で確認が行えない以上、
せめて就寝前30分の日記程度の習慣は遵守しようという間々ならぬ現実に対する私なりの精一杯のささやかな抵抗でもある。

さてこのような掃き溜めの地に私が足を踏み入れる事となった直接の原因としては
3年ほど前に社交会に招かれた際、それに参加するために邸宅を出て以来戻ることのない我が妹君が挙げられる。
あの極度の方向音痴を決して「一人で歩かせるな」と厳命されたにもかかわらず馬車の故障を理由に一人で降ろした忌々しき（その身に永劫の呪いあれ）下男の仕業により行方をくらまして以来、さながらハーネスが折れて御者のいない眼暗の馬の如く我が妹君はさまよい続けている。
1月ほど戻らぬ娘を待ち続けた結果、我が父君が家督を継ぐ条件としてして下したのが
　「放浪娘を帰宅させること」
かくして私もあれの足取りを追って3年近い放浪生活を続けることとなっているという事だ。

あれの無事と足取りはすぐ知れた。
あれは行く先々で問題と事件を巻き起こすのだ。追うのは別段難しくない。
ただ忌まわしいことにあれは無能ではなく生活力と問題に適応する能力だけは持っていため
問題、事件は足止めにならず自分で早々に解決するか放り出してさっさと別の場所へと移ってしまうのだ。
その後あれのうわさを聞いた私がその後を追うとその尻拭いをさせられるという始末。
あれに欠けているのは帰属意識と他人に迷惑をかけているという自覚と問題意識なのだ。
幼少のころ1週間ほど行方をくらまし大騒動を起こした妹に問うたところによると家に戻らなくても生活ができるために帰ろうということすら思い浮かばないらしい。

わけが分からない。

そのような理由で、利亜であれに惚れ込んだ男と一悶着を起こしてそのまま逃げたという情報を最後に、その後に知れた足取りがこの界隈周辺にいる「らしい」ということだったため
やむなく私はこのようなダストシュートのそこにこびりついた毒々しいカビの如きこの忌々しく汚らしい街へと足を運ぶ羽目となったわけだ。

ここ数日の探査を持ってこの街には居ないらしいことは知れた。
今日からは街の外へと探査の範囲を広げてみたいと思う。