ENo.2874 茜

賞金首のハムスターを引き渡し、無事賞金を一人頭７００ＰＳ頂戴した次第。ハムスターがつぶらな瞳を向けて訴え掛けて来て一同がｷｭﾝとなる中、俺は黙々と賞金を確認していた。

「７００ＰＳ確かに。じゃあ皆、飯食いに行こうぜ」

「ちょっと茜ちゃん！こんなときくらいｷｭﾝと乙女になっても良いと思うんだが！」

「向こうから肉の匂いがする。行って見ようぜ」

「君…　最近スルーが激しくないかい？」

「……茜さん、ホントにそんなに頼んで大丈夫だったんですか？」

こよみちゃんが俺の前に並べられた、すでに食い終わったベーコンのバターピラフと粗引き胡椒のミートパスタの空皿、白身魚の香草フライ、根菜の煮込みとろみスープ、300gビーフステーキ、野菜の一夜漬け盛り合わせ、大盛り季節野菜のサラダ、そして、骨付き鳥肉の炙り焼き２人前と、御当地ワインボトル１本を眺めながら不安そうに尋ねてきたが、俺にとっては何の問題も無い量だ。

煮込み肉うどん、湖魚の刺身盛り丼がまだ届いてないが、それ込みで問題無い。

問題が有るとすれば、１人でテーブル２つ使ってる事だろうか。ごめんなさいね。

「まぁ見てろって。地球人類を侮るなよ、っと」

「太るよー」

くりおねがボソりと一言。意味もなくドヤ顔なのがムカつく。

「太るよー」

「中年太りは黙ってろ」

「何それヒドイ！くりおね傷ついた！謝れ！」

なお、くりおねの立派なポッコリお腹は否定の世界で見れます。宣伝。

「足りんな」

「え…　まだ食べるんですか？」

締めのマンゴーシャーベットでお開きムードの私以外の３人の周囲が凍りつく。えーっと。何かドン引きされてるんだが…

「いや、金の話だよ。飯代がかさんでさ」

「一応気にしてたんだ。まぁ、そんなに食ってりゃね…」

「別にパン１切れで持たせる事も出来るんだがね。やっぱこの世界の食を食えるうちに堪能しときたい訳よ。何時までこっちで遊んでられるかも分かんねーしな」

締めのうどんを啜りながら、街に出回っている依頼のチラシを眺めてみる。

「宝石発掘で２０００ＰＳだってよ。こんぐらいガッポリ行きたいんだがどう思う？」

この世界の情報をいち早く受信？するイブキ君は、メモ帳を見ながら難しい顔をする。

「いやー、どうも発掘現場がドラゴンの住処らしいですよ。おそらく僕たちでは話にならないかと」

「じゃあ却下で」

「茜ちゃんって、アブナイ橋とか避けるよね。勝てない勝負はしないタイプ？もっと冒険しようぜ！」

「ヤダね。逃げ道のある負け戦は逃げる主義だからな。人生ってのは生きてなんぼのもんだよ」

さて、残りの依頼は…　と思ったところで、こよみちゃんがビシッと一枚のちらしを指差す。

「猫に会いに行きましょう」

ほう…　巨大山猫退治とな。

「こっちはどうなんだ？」

「さっきのドラゴンよりは可愛いもんらしいです。でもハムスターとは比較にならない凶暴さだとか」

「いーえ、きっと心は通じます！　ハムスターは無理だったけど、今度はネコで肉球を！」

「ＮＩＫＵ☆ＫＹＵＵ！　オーイエー、山猫に会いに行こうぜー！」

盛り上がるナマモノと２歳児を放置して、パーティの良心イブキ君に相談する。

「で、どうなのよ山猫」

「強いですよ。ただ、他の依頼と比較すると一番クリアできそうです。猫の情報は…」

「よし、お前ら。山猫の居る山に向かうぞ」

「わーい、やったー」「やったー、茜ちゃん大好きよー」

戦うとは決めてないが、北の街に行く道中に居るらしいという事で、様子見て倒せそうなら挑む、と言うような事に落ち着いた。

「よし、さっそく山登りの準備だ。皆心して取り掛かれッ！おやつの値段は良心の判断だ！行くぞ！」

「あ、待った！」

ストップをかける私に全員の視線が集まる。あー、いや大した事じゃないんだが…

「俺もマンゴーシャーベット食べたい」

「結局、まだ食うの！？」