ENo.2121 カラット・カラット

カラットは、魔法学校の敷地を優雅に歩いている。
後ろには顔の作りが似ているが、色が全く逆の二人のメイドがついてきていた。
片方は青色の髪をしたツインテール、右耳にはサファイヤのイヤリングをつけていて、
そしてもう片方は赤色の髪をしたロング、左耳にはルビーのイヤリングをつけている。

カメーリエではツァオベラー・フェストが開催されることもあり、その準備でいつもより賑やかであった。
カラット自身もジェイと組んでミニチュアガーデンと言うジュースバーを出店する予定である。
しかし、今回のカメーリエ来訪はそれとは無関係。先日のマリナの注文品のサンプルを届けに来たのだ。

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カメーリエ内に存在する寮の一つ、女子寮【ミレッティ】。その601号室が目的地点である。
この寮には昇降機は存在していないらしい、仕方が無いので階段を一段一段登っていく。
簡易魔導昇降機
ブルーリボンを持ってくればよかったかしら、少し後悔したが無いものは仕方ない。
それに、持ってきたとしても使えるとは限らないしね。後で確認しておきましょうか。

階段を登りきり、扉の前で601と言う数字を確認した。
コンコンコンコンと、ノックをすると中に居た人が扉に近づく音が聞こえる。

「カラット商会よ」

音が止まったのを確認して名乗ると、中からラフなパンツルックの金髪の女性が現れる。

「Bonsoir. 思ったより早かったね」

「Guten tag.残念だけど今回は荷物を届けに来たわけじゃないわ」

そう言うと、後ろのメイド二人を前に出す。

「ルビー、サファイア。例のものを」

そういうと、二人は持っていた箱を開ける。中には小さな原石の欠片がいくつか入っていた。

「流石に量が多くて直ぐには届かなかったのよ。
　代わりに今回注文した品の原石サンプルが届いたわ」

箱を手渡し、中身を確認してもらう。
受け取ったマリナは、原石を手に取りじっくりと見ている。
恐らく含有魔力を検査しているのだろう。

「品質……あとは年代もその辺りになるそうよ、運良く商会の倉庫に眠ってた物になるわ」

幾つかの原石を取り出しは、暫く睨んでは箱に戻すを繰り返す。
そして全てのチェックが終わったのか、ふぅと息を吐き出し、険しかった表情が和らいだ。

「問題なさそうね、そのサンプルは差し上げますわ」

表情を見て察したようだ、そして少し思考した後に思い出したように言葉を続ける。

「そういえば、私の宝石の錬成について興味があるのよね？」

突然の言葉にマリナは驚いた様子を見せたが、直ぐに落ち着き
「教えてもらえるの？それはうれしいけど、問題はないの？」

「別に、教えて損があるわけじゃないしね。
　と言ってもこの程度じゃ教えた事にはならないかもしれないけど。
　私の場合は、そうね……生まれつき、かしらね。
　先天性の能力、ギフトとか言っても良いかもしれないわ。
　鳥が羽ばたき空を飛ぶように、魚が海で優雅に泳ぐように。
　息をするように私はこの能力を扱えるわね」

片手を上げ、くるりと一回転。そしてその手を下ろしスカートを摘まんで軽くお辞儀。

「私の能力は、エネルギーと宝石を相互交換出来る……
　確かそういったモノらしいわ、詳しい事は私も分からないのだけれどね」

苦笑い、そして赤いメイドへ手を差し出し、白地にイチゴがプリントされた包装を受け取る。
包装を開けると、赤色の丸い飴が現れた。

「例えば、このキャンディを食べる。そうすると体の中でエネルギーになる」

指で摘み上げ、前歯で挟む。そして口の中に消えると、ガリ、ゴリと言う音が部屋の中に響く。
カラットの喉が上下に動くと、今までしていた音が消える。

「そして、そのエネルギーをこうして集めると……こんな感じで宝石が出来るのよ」

右人差し指で平たい胸を指し、そのまま左腕、左手と順になぞっていく。
そして最後に手のひらに乗せて指を離すと、そこには極小のダイアモンドが一粒載っていた。

「種類によるけど、質や大きさに比例して必要なエネルギーが大きくなるわね。
　エネルギーは今みたいに直前に摂取しなくても良いものなのだけれど、
　その場合私が小さくなる……と言うか見た目が幼くなるのよね」

ダイアモンドを放り上げる、空中でキラキラと輝いた後、カラットの口の中に消える。

「逆に宝石とかを食料の代わりにも出来るのよ。
　まあ、余り美味しいと言えたものではないのだけれど」

ガリと一つ音を立て、ダイヤモンドを飲み下す。

「多分貴女の知りたい情報とは程遠いと思うけど、私にはこれ以上の説明が出来ないわね」

少し困った顔を浮かべ、そして手を叩く。パチンと言う音が部屋に響いた。

「さて……それでは私はお暇させて頂きますわね、荷物はまた都合の良い時に届けさせますわ」

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