ENo.1604 エナ＝キークロップ

◆明朝：お日様が顔を出そうとしているくらい◆

とぽぽぽぽっ
ばしゅ、
ざくざくざく・・・

キュ「んぅ・・・エナ、また実験？」

わたしは、夜寝ているときに夢の中で思いついた不思議なこと
それを現実でも実行可能かどうかを確かめるべく実験に集中していました。
そのため、周りの音は自分がたてた物以外は聞こえず、
キュークの声は全く聞こえていませんでした。

キュ「ねぇってば！・・・あ、聞こえてないのか」

そして、声が聞こえていないことに気づいたキュークは逡巡した後、
わたしが何をしているか確かめるために身体に昇り、
頭の上からのぞき込んだらしいです。
それでも、気づかないわたし・・・

キュ「鉢植え？薬を入れてるの？なにこれ・・・」

机には複数の鉢が並べられており、
物によってはちゃんと土が張られ、草や花、キノコなんかも生えていたりする。
それに、ときどき肥料のような物を加えたり、物にスポイトでなにやら変な色の液体を垂らしたりしている

キュ「ホントに夢中ね・・・えっ、わっ、きゃ！」

ぼすっ・・・

そして、運悪く現在からであった鉢植えに落ちは待ってしまったらしいです。
当然そんなことはお構いなしに続けるわたし、
何かはいってる鉢にスポイトから液体を垂らす・・・
当然それはキュークの鉢も対象になってしまい

キュ「ちょ、エナ、助、熱っ！今のな、ひゃああ！」

垂らされた部分に薬品が付き薬焼けをしていくキュークの毛皮。
それも一カ所ではなく何回も何回も
着々と進められるエナの実験に合わせて悲鳴が続き、
その悲鳴は誰の耳にも入ることなく消えていくのでした。

エナ「んっ・・・できた〜♪」

目的の物は、全草毒であるスズランと全身毒であるベニテングタケ
この二つの精神体を抽出し混ぜ合わせることにより新しい精神毒を作ると言うことでした。
それはいろいろな薬品と作業によって成功し、手元にはキノコの傘が咲いたスズランのような変な物が握られていて

エナ「あれ？キュークそんなところで何をし・・・あー・・・」

すっ

痛みで気絶してしまったのか、感じないように自ら寝たのか
円形脱毛しまくりのキュークを見つけました。
何とか引っ張り出すと、その衝撃で起きたのかこちらを見つめ・・・

キュ「もうちょっと周りに気をつけなさいよ〜！」

といきなり怒ってきました。

エナ「だから、わたしが実験に集中してるときは近づいちゃだめって何回もいってます」
キュ「う・・・それはそうなんだけどさ・・・」

いわば自業自得なのに何を怒っているんだか・・・
でも、さすがに見た目的に忍びなかったので今度からできる限りは気をつけることにしましょうか、

◆昼：お昼ご飯を食べて、少しこなれた後◆

今日もお外へ探検です。
昨日探した範囲よりももっと遠いところへ今回は探しに行くらしいです。
そこら辺にいい物があるかもなのだとか
特に目立つ物のない草原を歩いていきます。

エナ「ホント木もあんまりないし、何でこんな環境なんでしょうね〜？」
キュ「雨があんまり降らないんじゃないかしら」

たしかに、雨が降らないとなると低い木が増えて丈の短い草が生えやすくなりますが・・・
といっても、ここから普通に森も見えますし、ホントに不思議な環境です。
そこら辺を研究するだけでもおもしろいかもですね・・・疲れるからわたしはやりませんけど・・・

目的の場所付近について、いろいろと探し回っていると不意に物音がして

エナ「あっ・・・」
キュ「あ・・・」

昨日戦った女の狩人さんです。
ここら辺では女族という名称で呼ばれるらしい彼女は今回は同じすみかの仲間か
他に二人を連れていました。
そして、こちらを認めると臨戦態勢へと移ります・・・

エナ「どうしましょう・・・？」
キュ「どうしましょうって・・・戦うしかないんじゃないの？」
エナ「やっぱりそうですよね・・・」

わたしたちを捕まえてどうのこうのや、殺す意志は全く感じられず
ついでに敵意という敵意も感じられませんでした。
しかし、臨戦態勢です・・・

エナ「もしかして、機能のリベンジに来たんですかね？」
キュ「わたしたちもたまたまここにいるのに？」

わたしたちを見つけたときの顔は、目的の物を見つけた顔だった気がします。
前回、おっきい竈馬や動くお肉とともにパーティをくんでいたのは本意ではなかったのでしょう。
それをふまえ今度は本来の仲間を連れてきたと・・・

エナ「わかりました。それじゃあ、やりましょうか！」

◆昼過ぎ：何とか町へ帰還◆

エナ「うぅ・・・負けてしまいました・・・」

今回もなまめかしい身体を武器に変に視線誘導されてしまい決定打を浴びせられないまま
倒れてしまったわたし・・・
心のどこかで絶対に勝てると思っていたのでしょうか・・・その心の隙を突かれたのか・・・
それとも単純に力不足だったのでしょうか

エナ「今度は、こっちからリベンジしに行きますよ！」

去っていく女族さんたちに向かってそういうと彼女たちは静かにうなずいて去っていきました。
何回でも来いとそう語っている風でした。

キュ「そんなこと言っちゃってよかったの？」
エナ「わたし、結構負けず嫌いなんですよ！」
キュ「それは知ってるけど・・・ほら、他の二人とか」
エナ「あ・・・」

積極的にこちらから探すと言うことはせず、
まだしばらくこの周辺で滞在する予定ですし、
また、たまたまあったときに果たすとしましょうか
それまでにはいろいろと鍛えておかなければですね・・・

キュ「あ、エナ、訓練する気になった？」
エナ「う・・・訓練はそれはそれで苦手です」

そのあと、朝のことを含めた憂さ晴らしという名の訓練に強制参加させられることとなりました。
戦闘より疲れたかもしれません。

◆夕方前：空が虹色になってきている時間◆

エナ「えーと、これとこれと・・・あ、これも」
キュ「この赤いのでいいの〜？」

朝方作った物はある意味で奥の手のような物であり量産も難しく連発はできないので
気軽に使える物をたくさん作らないと行けません。
戦闘中に迷ってる暇なんてないですしね

エナ「そう、それです。ああ、そっちの青いのもお願いします〜」
キュ「もう持てないわよ！」

あわただしく会話が飛び交う部屋の中にはいやな臭いの煙が立ちこめていたり
ときおり、ぴかぴか光る変な煙だったり
目の所に来たとたん涙が出るような物だったり
耐性がなくては入ることすらできない空間になっていました。

キュ「朝も作ってたのに、また作るなんて何かに目覚めたの？」
エナ「うん、夢っておもしろいんだよ〜♪」

朝も夢だったけど、今作っているのも休憩中の午睡の産物
雲母のカケラに神法をかけ、視覚から脳を疲れさせるという変な物です。
それを薬煙に乗せる形にして、敵へと使うのですが・・・

キュ「これ風向きによっては味方に行くよね」
エナ「そ、そんなこと・・・ないですよ？」
キュ「じーっ・・・」

確かに風邪があると動きは緩慢にしなりますが、一応わたしの神力とつながるようにしてあるので、
とんでもない方向へ行くようなことはないのです。
失敗しなければですが・・・

◆夜：久しぶりにゆっくりと本を読む◆

キュ「エナそろそろ寝ないと」
エナ「もう少し〜」

キュークの注意にも生返事をしてしまいます。
今わたしが読んでいるのは、いわゆる冒険譚です。
たまたまわたしのカバンに入っていたようです

キュ「ほんとにもぅ」

キュークは諦めたように布団に潜ってしまいました。
これで好き放題読めます♪

このお話はわたしたちより以前にどこかの世界を冒険した人が体験したことがしたためられています。
しかし、なにぶん年代が書いていないほど昔のようなので今はその世界自体あるのかどうかもわからないのですが、
それでも、読んでいるとわくわくします。
いつか行ってみたいそう思わせる文章が並んでいるのです。

しかし、現実を考えるとそうはうまくいきません。
今現在だけでも、この世界から出るという行為は破格の行為です。
とても、わたしだけ、もしくはお二人さんの力を借りても無理でしょう。

エナ「それでもいつかはお父さんみたいに・・・」

あっと・・・そんなこと考えていると本の内容だけが感情とは別に入ってきて変なことになってしまいます。
真面目に読まないと・・・
何ででしょうか、こう一人だと余計なことを考えしまいますね・・・キュークは・・・もう寝てますよね

キュ「寝てないわよ」
エナ「ひゃっ！」

また心を軽く読まれていたようです。
そういうとキュークもわたしが本を読んでいる机に布団代わりにしているタオルと一緒に移動してきて、
一緒に本を読み始めました。
途中からだとキュークが話わからないと言われてしまったのでまた最初からですが・・・
それでも、二人で読むと思ったこと言い合ったり、同じところで笑ったり、結構楽しい物です。

そして、そのまま夜も更け、いつの間にやら眠りについていたようです・・・

◆幕間：装飾作成◆

エナ「うまくいきませんね」
キュ「なんでだろうね」

持ちの世界ではうまく作れていたはずの装飾品
しかし、こっちの世界の材料か合わないのか、なぜだかうまく完成させることができません。
確かにわたしの技量は足らないですが、それにしても変です。

キュ「もうちょっと加工しやすい物で試してみたら？」
エナ「うーん・・・でも見た目でわからないですし・・・」

そうなのです・・・こっちで使う材料という物は、たたいてみても、嗅いでみても、囓ってみても
その素材の強度とかがあんまりよくわからないものになってるのです・・・
町の本にもそういうタイプの本はなぜだか全く売っていません。
こちらの世界には研究者さんがいないのでしょうか？

キュ「たしかに、研究者然としている人はあんまり見かけないわね」
エナ「そうですね、ついでに科学っぽい物が発展している様子でもないですし」

こちらの世界で仙人に当たるような人と会えればいいのですが、
地道にちょっとずつ研究して、他の人と情報交換するしかないようです。