地獄はひとつの社会である。

億万の住人が、我々が住むのとなんら変わりない様で社会を形成していて、職場へ出勤
して仕事をこなし、たまの休日に地獄のボウリング場や、地獄のレジャーランドや、地
獄のトレーニングジムへ行ったりするのだ。
地獄の書店で本を買ったり、地獄のビデオレンタル店でDVDをまとめて借りるなどする者
も数多くいる。
彼女の友人のひとりは地獄のファーストフード店でアルバイトをしながら、ボサノヴァ
歌手になるための学校へ通っている。将来は地獄のコンサート会場を満員にするのだと、
先日聞かされたりしていた。
死んで花実が咲くものかという言葉もあるが、地獄には死してなお夢を追うようなヤツ
がいたりするわけだ。

そして彼女。ユーティアは、地獄で公務員をやっている。
我々の世界にたとえるなら、警官隊や軍隊のような役目だが、便宜上『死神』などと大
仰な名で呼ばれていた。

死神の集団は地獄最大の武力をもって治安維持から要人警護、無法者の取締りと荒っぽ
い事なら何でもこなす。地獄を飛び出して、例えば現世では死んだ人間のタマシーを導
く、昔話で語られているそのまんまの仕事もあるのだが、妖怪、悪鬼、魑魅魍魎が悪さ
をしていて、その世界に住んでいる人々の手に負えないとなった時は、地獄から死神を
こっそり派遣して、彼らに化け物退治をさせているのだ。
そんなわけで死神ってのは万能で優秀、地獄でもとびきりエリートみたいな扱いなのだ
けれど、例外的に『我々の世界にもいるようなまるっきり駄目なヤツ』を選び抜いて集
めた特殊な死神の部隊がある。

地獄の中でもグズやノロマ、飛び切り頭の悪いのと、どうしようもないバカばかりを寄
せ集めた部隊で、かつて地獄でドンパチをやっていた頃じゃあ使い捨ての効く鉄砲玉と
してそれなりに戦果を挙げたものだったのだが、平和な世界じゃ畑の肥やしより役立た
ずと除け者扱いをされている、哀れなんだか自業自得なんだかよく分からない集団だ。


人呼んで『戦力外部隊』！

ユーティア・ガトーショコラ部長補佐として、彼女はそこにいる。



　　　　　※


出張報告書、某月某日某曜日。

低く空を覆い隠していた黒雲が、裂かれるように消え行けば、天井知らずの空からカンカン照りが顔を出す。
早朝から降り続いていた雨がようやく上がり、街にも昼下がりの活気がようやく戻ってきたようだった。

電車から降りるなり、木陰で雨宿りなどする羽目になったのはけっして幸先が良いとは言えないだろうが、
紅葉から滑り落ちる水滴を数えるのに飽く前に晴れたお陰で、日が沈むまでゆっくり散策ができそうだ。
新しい土地に降り立つ時の胸の高鳴りは、いくら歳を重ねても収まることなどないように思える。


「さて…ここが件の場所でございますね。」

「まともな世界じゃ戦力外と謳われようと、見返してみるにはこの晴れ舞台！！」

「動植物が謎の巨大化！暴れて手の付けられぬ、悪鬼と化した数多の救えぬ亡霊どもを薙ぎ倒す！」

「戦場を見つけるに至り、このユーティアが本懐を果たさせてもらうのでございますよ！！」


高らかに吼えた。

この地でならば一発逆転を成す事だってあり得るのだ。
賭けてみるだけの価値はある。

そういう風に信じていたのだ。

　

メリム(1951)の声が届いた：
メリム「スティルフの町、そろそろですかね……？」

マナ(2678)の声が届いた：
マナ「ぶんかさい、ってなぁに…？」

ソイソイ(2754)の声が届いた：
ソイソイ「ここの角のところをじっと見てごらん……感じるだろう？聖なる鋭角のオーラを」

あんず(3412)の声が届いた：
あんず「・・）ｂ　よーっしがんばるんば！」
まぁる「ところで装飾作れるヤツはいないか？ 見つけたら伝言するかもな　（ω」

ルビネル(183)の声が届いた：
ルビネル「このへんにゴミ埋めとこっーと」