ENo.1126 暗殺組織【神籬】

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　　　　　　　　　　　　報告書　探索6日目
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現在地：森林/エスタの街

処分者：ハムスター
拾得物：白い歯/椿

白い歯は間違いなくハムスターの歯だな

“兎”
依頼一件消化。巨大化したハムスター退治
特に害はなさそうに見えたが。
リルが存分にもふもしていた。写真を添付する
エスタの街についてはコレと言って目新しい情報はなかった
リルの体調を見てすぐに出発する

“神無”
伝言の件以来連絡は無し
アンジニティについても調査を開始する

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たんさく　６日目　ちょっとあつい

やっと街についたよ！リルはお留守番です
ちゃんと、とかげちゃんはそっちについたかなー
まいごになってないかなー
おなかすいてもないちゃだめだからね！
とかげちゃんがいない間にケーキ全部リルのだ！！

おとぎりさんへ
とかげちゃんはそっちでいい子にしてますか
あんまりいじめちゃめっ！

PS1
ちょ、おまあああ！！！
俺のケーキまで全部食ったんかああああ
夕飯ににんじん喰わすぞおおおおおおお

PS2
アホか、俺をどこぞのカニバ野郎と一緒にすんな

PS3
アイリス…お前なあ…言うようになったやんけ…
あとで覚えとけよ

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探索5日目の報告書　確認

まあ、全部君から口頭で聞いたから特に記す事もないかな
風切り羽については、分析中
DNA鑑定にかけてるからもうしばらくかかるよ

世界通信社ねえ
面白い生業をしている子もいるものだ
高確率でまた伝言は来るだろう
彼らのあの性格だ。こちらの動きをみて楽しんでるに違いないからね

リルちゃんへ
ちゃんとお留守番できてますか？
前に言ってたご褒美は、とかげに持たせているから受け取っておくれ
紅茶を入れる練習をしているのか
ヤケドをしないように気をつけるんだよ
とかげが居ない時や、一人の時は、絶対に火は使わない事
約束を守れない子はおしおきするよ
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（Eno1152とリンク）

神籬　内部
　　　　　　　　　　　　　　　四天回廊ニテ

「おや、おかえり。早かったね」

神籬の中でも特に異質な空間である“四天回廊”
まるでプラネタリウムを思わせるかのような
仄かに光る夜色の廊下を蜥蜴は歩いていた

長い廊下は己の穢れを払い落とすかのような
一種の儀式を錯覚させる

床から漏れる淡い光が、バレエブーツに施された金の装飾に反射し煌めく
終着点には華美に装飾された扉があり、まるで扉の奥の主を守るかのように
一人の男が佇んでいた

「姫さんおるか？報告したいんやけど」

男…音霧の顔をチラリと見るがすぐに視線を反らす。

「残念。姫様はご寝所でお休みになられてるよ」
「…そーか」

音霧の返答にさしたる感情も沸かず答えた。
それは、いつも通りの返答だったからだ

「姫さんはいつになったら起きるんやろなあ」
「さあ？それは誰にもわからないよ。休息を誰よりも愛しているお方だから」
「ほんじゃあ、報告はお前でええわ。…っても先に報告書届いてるはずやから大体の事はわかるな？」

音霧は頷くと、懐から銀に光る風切り羽を取り出した。

「君が持ってきたこの羽だけれどね。付着していた砂と土を調べた所、君達がいたセルフォリーフの土のとは全く異なる成分が検出されたよ」
「通信屋の言っとった事はおおとったって事か。アンジニティやったか」
「そう、アンジニティ。“否定の世界”とも呼ばれている見たいだね。セルフォリーフの土が栄養分に富んでいるとすると、この土には全くといって良いほど栄養がない」

土壌はもちろん場所によって多種多様に変化するので一概には言えないが
どんな環境に身を置いているのかは予想できる

「っつーか、世界が違うって正直どーするん。俺らが繋いでるのはセルフォの方やぞ。今さらアンジに繋ぎ直すってどーすんねん」
「それは問題ないよ。君達はセルフォの方でそのまま活動してくれればいいから」
「……は？」

あっけらかんと、当然の様に言う音霧に、
蜥蜴は目をむいた

「アイツ等が居る世界ちゃうってわかってんのに、そのままおれってどういう事やねん。俺らに無駄足せえって言うてる様なもんやけどわかってん？」
「別にそうは言っていないよ。何事にも意味はちゃんとある」
「せやったら…！」
「何れわかるよ。…何れ、ね。君達はそのまま情報収集に力を入れてくれ」

もの言いたげな蜥蜴の言葉を遮って、音霧は静かに答えた
それは一切の反論を許さない声音で
苦虫を噛み潰したかの様な顔をした蜥蜴は不承不承頷く。

「…アンタは何でも知っとるんやな。知っとる上で遊んどる。……楽しいか？」
「そりゃあもう。君達みたいな短命と違って、私の生は長いんだ、暇潰ししなくてどうするんだい」
「…趣味悪。アンタ本気で頭イカレとんな」
「君も人の事言えないだろう？…むしろ此処にいる人間は皆、イカレてるさ」

っけ！と悪態を吐いた蜥蜴は何も言い返さない
否、何も言い返せなかった
此処に居る人間全てがオカシイ事は自分自身よくわかっているからだ

「アイツ等が居るアンジニティも、此処もそう変わらんやろな」
「そうだねえ…そうかも知れないね。所詮屑だからね」

何が楽しいのかにっこりと笑った音霧を見て
背中に何か冷たい物が通り過ぎた

「嗚呼、そうだ。ついでに仕事していってくれないか？」
「仕事ォ！？まだ働かせる気か！！」

心底嫌そうな顔で拒否するが
音霧にそんな事は効かないのは百も承知である

「趣味と実益を兼ねた仕事なんだから、いいじゃないか。先日の“おそうじ”で２０名ほど捕虜にしたんだ」
「また作る気かよ…」
「仕方ないじゃないか、あの子も居なくなって君達も別件で居ないんだから。今の神籬は戦力的に大きな穴があいている状態だからね。…虎杖丸を過労死させるわけにはいかないさ」

ほとんど睡眠を取っていない虎杖丸に笑顔で「働け」と言う奴の台詞では断じてない
そう思いつつも戦力に穴があいているのは事実なので反論はよしておいた

「いつも通りたのむよ。身体は壊さず、中身を壊してあげて。あとはアイリスに回してくれればいいから」
「禍ツ兵なんぞ、ようけおってもしゃーないやろ」
「わかってないねえ、自我のない従順な子達ほど扱いやす事はないよ。キミタチは余計な感情がある分、裏切るからね。……あの子のように」
「………」

音霧の“あの子”という言葉を耳にするたびに、
胸が軋んだ音を立てる
どうしてそうなるのか知らない、知りたくもない

（アホか…“怒り”に決まっとるやんけ）

「わーった。捕虜は“羅刹部屋”に入れといて」
「もう入れてるよ」
「入れてるって全部か！？」
「もちろん」

満面の笑みで答える音霧に、もう蜥蜴は何も言えなかった。

音霧は話していただけなのに、何故か疲れた様に見える蜥蜴の背中を見送った

「………あの子は…」

自然と口角が上がる

「あの子は一体何を連れて帰ってきたのかな…？」