ENo.1021 ジョン・Ａ・マルクス

目指せ☆ＭＳＢＳの星　そのご

人の夢と書いて『儚い』。
読みが同じだからといって『穿かない』と書くと大違いな気もするが
これはこれで極一部の性的嗜好の持ち主にとっては見果てぬ夢なのかもしれない。
そう考えると。
『履かない』も『吐かない』も『掃かない』も『吐かない』も。
もしかしたら見知らぬ誰かの夢なのかもしれない。
奥が深い。
それはそれとして。
人生１７年目にして。
人の夢がいかに『儚い』かを痛感するに至ったわけだが。
まあそれはそれとして。
今日も元気です父上母上。

何故そのような事に至ったのか。
事の発端に関しては判然とせず。
推測の域を出ず。
というのも首謀者とも主犯格とも元凶とも言うべき人物に問い詰める機会を失い。
もっとも彼が首謀者とも主犯格とも元凶とも言うべき人物なのかも定かではない。
まあそれはそれとして。

突然３人組の女性に襲われた。
有無を言わさず有無を言われず。
常日頃清廉潔白を自信を持って主張できるほどの人生を送っているとは言いがたいが。
少なくとも女性に因縁をふっかけっられる人生を送っていないとは言いたい。
ならば原因はと問いたい。
自分以外の誰にあるのかということを。
大江戸さん…いや大江戸隊長にしても無闇矢鱈女性に臨戦するとこうことはあるまい。
ならば原因は問いたい。
自分と大江戸さ…隊長以外のだれにあるのかということを。
即ち消去法で満場一致。
ミック石川こと石川実継。
彼一人をして女性から襲われる原因は語り尽くせないほどある。
両手両足の指の数程度ではその氷山の一角に掠り傷を負わす程度にも足らず。
いつかこのような事が起こることを考えていなかった訳ではなく。
今までこのような事が起きなかったことこそ不思議であり。
今まさにこのような事が起きていることはむしを必然であるとすら言える。

まあそれはそれとして。
当のミックはというと
「うおぉおぉおおっ！　めっちゃキレーなおねーさん達が来たっ！　しかも３人も！！
　　　　10年前から愛してましたーっ！
　　　　　　結婚してくださいっ！！」
１０年ぶりの再会だろうか。
だとしたら非常に微笑ましい話ではあるのだが。
１０年後にミックを追ってこの世界に来るほどの執着。
もしかしたら１０年後伝説の木の下で会いましょう的な約束をしていたのかもしれない。
このアンジニティで。
そう思い周囲をぐるりと見渡すがあからさまに伝説の名を冠しそうな木というのは見当たらない。
もしかしたらミックと彼女たちにのみ見つけられる目印でも刻まれているのかもしれない。
だとしたら非常に微笑ましくいじましい話ではあるのだが。
気になるところが一点。
木だけに。
ミックは確かに言った。
「めっちゃキレーなおねーさん達が来たっ！しかも３人も！！」
はて。
彼女たちの名は？
名を呼ぶ必要もないほどの密接な関係なのだろうか。
答えはおそらく否。
どう見ても初対面だ。
ミックは会ったこともない女性３人とこのアンジニティの伝説の木の下で１０年後の再会を約束したのか。
答えはおそらく否。
ミックらしい方便であり過去の捏造も甚だしい。

さて話を整理しよう。
ミックにとっても目の前に突然現れた３人の女性は初対面。
しかしながら彼女達はすでに臨戦態勢を取っており。
すなわちやるき満々だ。
すなわち殺る気満々だ。
間違っても犯る気満々ではないと思いたい。
殺るも犯るも本来の漢字の読み方とは程遠い。
しかしながら多感な年頃にとってそれはあまりに秀逸な当て字であり。
考えた人はお近づきになりたくないが尊敬に値すると思う。
しかしながら俺たちはこう見た目通り健全な学生生活を送っているだけの高校生。
どうせなら清く正しいグループ交際からでもお願いしたいところ。
見た目に異議ありって？
それは当のミック本人に直接お願いしたい。

まあそれはそれとして。
現状を何とかしなくては。
誤解は誤解であるならば理解していただくしかない。
身の潔白を。
少なくとも俺と大江戸さ…隊長の。
ミックに関しては自業自得なのでいたしかたない。
煮るなり焼くなり殺るなり…犯るのはさすがにいろいろな規制に引っかかりそうなので勘弁願いたい。
実際に殺されたとしても問題はない。
なにしろミックは「不死身」「ゾンビ」の異名を持つほどの不屈。
七転び八起きの言葉通りの男だ。
女性に殺されるならむしろ本望だろう。

まあそれはそれとして
謹んで話し合いを始めよう。

とこれまでの粗筋終わり。
これからの粗筋が始まります。

激しい口論の末。
紆余曲折いろいろありまして。
ミックが有名な泥棒三世のまねをしてビンタされたり。
ミックが逮捕されたり。
ミックがお詫びの印に箱に詰められたり。
なんとか和解することが出来た。
立った立ったフラグが立った。
ミックの魅力ゲージ大幅アップの臨界点突破。
感動のエンディング。
間違ってもここで名曲『女々しい野郎どもの詩』を流してはいけない。
それではあまりにも彼女たちに失礼だ。
もしかしたら彼女ではなく彼たちかもしれないが。
少なくとも現時点では判明していない。
ひとを見かけで判断してはいけない。
否。
ひとの見かけくらい信用しなければいけない。
「うおぉおぉっ！　勝った！　勝ったでーっ！　ってコトは、オレタチ結婚？！
　　　　さあ！　ハネムーン会場はコチラですっ！　一緒に愛の巣つくりましょーっ！」
ミックは既に幸せ有頂天。
本当に彼の時代が来るとは思わなかった。
しかし結婚は人生の墓場だとも言う。
「不死身」で「ゾンビ」なミックはどうなってしまうのだろう。

まあそれはそれとして
ミックの冒険はこれで終わり。
第一部完。
次回作者取材の為休載の後第２部に突入。
わくわくするなあ。
わきわきするなあ。

あれ？なんか違うぞ。

ここは…どこ…だ？

俺はゆっくりと目を覚ます。
まるで深い深い眠りから覚めたようだ。
最初に目をしたものは天井。
どこの天井なのかはわからない。
どこかの知らない場所。
しかし間違いなく天井にしか見えない天井。

「ここは…どこ…だ？」

搾り出すように声が出た。

途端。
どことも言えない方向から声がした。
それは俺の問いに対する答えなのかもしれない。
まるで答えになっていなかったのだが。

「あらーあらあらあらまあまあまあようやく目ぇ覚ましやがりましたねこのボンクラねぼすけが」

そう言うと続いてからからと高らかな笑い声が響いた。

人の夢と書いて『儚い』。
そう。
夢だったのだ。
それは彼女たちのとの出会いではなく。
彼女たちのと和解も。
ミックの結婚も。
第一部完も。
全てが夢。

思い出した。

俺達は負けたんだった。