ENo.89 鎌瀬犬介

六日目

ハムスター「まさか僕たちがやられるなんて……ヘケッ☆」

防人「イラッ」

苦戦になりながらも、何とかハムスターを倒した俺たち。

ハムスター「だけど負けたからには約束を守るのだ。さぁ、好きなだけモフモフするのだ。クシクシ☆」

防人「イラッ」

鎌瀬犬「……まずはその演技を止めろ」

ハムスター「はい、すみません……」
ハムスター「こうすれば人気を取れると思っていたので……」

レイナ「そんなことよりモフモフです！」

いきなりレイナが大声を出す。

レイナ「……コホン。いえ、私は別に構いませんが百舌子さんがモフモフしたがっているので」

百舌子「えっ？ボクはそこまで――」

レイナ「モフモフしたいですよね！？」

百舌子「う、うんっ！ボクとってもモフモフしたい！」

百舌子のやつ、幼いながらも空気を読むスキルを習得しているな……。

ハムスター「さぁ、好きにモフモフしてください」
そういってハムスターたちが仰向けになる。
……こいつらオスだったのか

百舌子「わぁ〜、すごいモフモフですっ！」

モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……

レイナ「そ、そうですね。確かにこのモフモフは悪くありませんね……」

モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……

鎌瀬犬「……あんたはしないのか？」

防人「おっさんがモフモフしているところを見たいか？」

鎌瀬犬「……それもそうだな」

百舌子「幸せですぅ〜」

モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……

レイナ「フフフ……」

モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……

二人はずっとモフモフしている。放っておくとこのままモフモフしていそうだ。
防人の奴など暇つぶしに読書を始めてやがる。
俺も暇つぶしの道具を持っていればよかったが、あいにく煙草しか持っていない。
しかしこの煙草、どれだけ吸ってもなくならない。
これもマナの力というやつか？
人間の頃は苦手だったが職業柄咽ながらも吸っていたが、この姿になってから吸っていてもなかなか苦にならない。
そもそも犬が煙草を吸っても平気なのか？

鎌瀬犬「……そろそろ次の街に向かわないか？」

レイナ「……もう少しだけ、あと五分……、いえ、十分ほど……」

モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……

……この様子だとなかなか離れそうもない。
いっそのことハムスターごと街に連れていくか？
レイナがこの様子だとおそらく百舌子も――

百舌子「ねぇ防人、このハムちゃん連れていこうよ！」

モフモフモフモフモフモフモフモフモフザシュッ

……おそらくモフモフするたびに力が増していたのだろう。
百舌子の腕がハムスターの身体を貫いていた……。百舌子の腕が紅く染まる。

百舌子「ぁ…………」

レイナ「…………」

レイナもモフモフするのを止め、百舌子の様子に気づいたようだ。

防人「うわぁ……」

防人も読書から気づいたようだ。
自分の娘なんだから引くなよ。

ハムスター「は、ハム彦ーーーーーー！」

ハムスターの一人が叫びをあげる。今のハムスターはハム彦という名前だったのか……。

ハムスター「ひ、ひでえ……。確かに俺たちは敗者だけど、何もここまでしなくてもいいじゃないか！！」

うん、こんなことになるとは予想外だった。
さすがにこれは取り返しがつかないぞ。

ハムスター「こんな殺人鬼がいるところでモフモフされ続けられたら死んでしまう！俺は森へ帰らせてもらうぜ！！」
ハムスター「わ、私も帰ります！」

捨て台詞を吐きながらハムスターたちが一目散に森へ逃げていく。
残されたのは、ハム彦の死骸だけ……。

百舌子「防人……、どうしよう……。」

防人「なんだかんだいって、百舌子はこの中で一番力があるからな。この世界で戦闘をしているうちに、力が付いていたんだろう。ま、これからその力をコントロールしていけばいいさ」

百舌子「うん……」

防人が何とも親らしいことを言う。普段はあまり喋らないからどんな人間かわからなかったが、ちゃんと娘のことも考えている、いい親なんだな。
それにしてもこのパーティは百舌子とジョニー以外は基本的に自分から喋ろうとしないな。
これからもうまくやっていけるのだろうか。

防人「とりあえず百舌子は手を洗うまでは俺に近づくな」

レイナ「……私にも近づかないでくださいね」

ジョニー「オレ様にもナ！！」

百舌子「あうぅ〜……」

本当にうまくやっていけるのだろうか。

鎌瀬犬「……それで、このハムスターはどうする？」

防人「さすがにここに放置するのはアレだし、適当な場所に埋めるか？」

まつり「そんなのもったいなすぎるっしょ」

俺たちが悩んでいたところにまつりたちのチームがやってきた。
どうやら向こうも無事にハムスター達に勝ったようだ。
何故か、まつりの手に大量の赤い肉塊が握られているが。

鎌瀬犬「……どうする気だ？」

答えはだいたい予想できるが、念のためにまつりに聞いてみる。

まつり「当然喰うっしょ」

……やっぱりか。

防人「あー……、俺たちはいらないからお前達が持って行っていいぞ」

まつり「なら遠慮なく貰うっしょ」

クリス「わかっていると思うけど、食べるのはまつりだけよ」

防人から許可を得ると、まつりは慣れた手つきであっという間にハム彦の身体から臓器と肉を分け始める。
それにしても見事な捌き方だな、達人級だ。

まつり「ま、これくらいで充分っしょ」

五分も経たないうちに終わったようだ。

まつり「これは素材に使うといいっしょ」

まつりが俺たちに大きな白い塊をゴトリ、と置いていく。
これは……、ハムスターの歯？

まつり「『Gummer』ではげっ歯類の歯はその丈夫さから様々な装備の素材として使われているっしょ」

鎌瀬犬「……なるほど」

ハム彦、お前の死は無駄にしないぞ。

今回の戦利品……白い歯
本文終わり

つづくとおもいたい

〜〜おまけ〜〜

人気投票ネタ

鎌瀬犬「……最近不特定数の誰かに見られている気がするのだが」

レイナ「……自意識過剰ですよ。誰が好き好んであなたのような不細工な犬を監視するのですか？」

確かにその通りなのだが……。
しかし、確実に誰かに見られている。

防人「それは人気投票が原因だな」

人気投票だと？

防人「この島の冒険者たちが、それぞれ他の気に入った冒険者に票を入れるんだ」

鎌瀬犬「……だが俺は特に目立つような行動はしていないぞ？」

防人「お前さんはあれだ、日記を長々と書き続けているおかげで日記ランキングに載っているからな」

ランキングなどあるのか……。

防人「日記だけでなくステータス、所持PS、人狩り数など、様々なジャンルを競い合うんだ。」

ということは、この日記は他の冒険者に公開されていたというのか。

鎌瀬犬「……不覚だったな」

レイナ「……まあ、無駄な日記を書くだけで票が入るなんて、とんだ茶番劇ですね」

百舌子「それで、ケンスケさんはどのジャンルに投票されているんですか？」

防人「えーっと……、『かっこいい』ランキングに６票、『おもしろい』ランキングに３票だな」

百舌子「すごいですっ！」

レイナ「たかが6票と3票でしょう？この世界に冒険者は何千人もいるんですし、そんなちっぽけな票数で浮かれているなんて馬鹿馬鹿しいです」

防人「だがその何千人の冒険者の中で19位と30位を獲得しているぞ」

なかなかに上位なのか。

鎌瀬犬「……ということは少なくとも、俺の日記を見ている輩が数人いるということか。……悪くはないな」

レイナ「……あなたの日記を見る人なんて物好きしかいませんよ」

今日のレイナはやけに突っかかってくるな。

鎌瀬犬「……そういうお前は票が俺より入っていたのか？」

レイナ「…………人気投票などしょせんお遊びですよ？」

……なるほど

レイナ「な、何ですかその気持ち悪い笑みは！？」

鎌瀬犬「……他意は無い」

レイナ「それに票がないのは百舌子さんも一緒でしょう？」

防人「いや、百舌子も1票だが『かわいい』ランキングに入っているぞ」

レイナ「えっ」

防人がランキングを掲載しているページを開く。
たしかに、『かっこいい』『かわいい』『おもしろい』のランキングのうち、『かわいい』部門に1票入っている。

レイナ「そんな馬鹿な……」

百舌子「誰だかわからないけどありがとうございます！」

レイナ「ま、まあ一人称がボクのロリ娘なんて、あざとい設定をしていますし、1票くらい入っていてもおかしくはありませんね。それに、今回のジャンルはまだ次回まで投票可能ですから、まだ結果はわかりませんよ」

防人「せやな」

百舌子「せやな」

鎌瀬犬「せやな」

ジョニー「せやな」

レイナ「くっ……。今に見ていてください、必ず見返してあげます」

〜〜おまけ終わり〜〜

チラシの裏
というわけで、日記を読んでくれている方、人気投票で票を入れてくれた方、ありがとうございます。

これからも媚を売り続けていくんで宜しくお願いします('A`)