ENo.9 ツィエルアーシャ・エロ＝サヴァーレン

≪第13〜14回更新　セクシー！≫
第6位 ENo.9 ツィエルアーシャ・エロ＝サヴァーレン　13票

ツィエル「物凄く遅いけど投票ありがとう！　「この人しか思い浮かばなかった」「このお方は安牌。セクシーすぐる」
　冥利につきるよ！」

ツィエル「「内臓せくし〜」「セクシーさねッ！服寒くないんさ？」「セクシー！」「セクハラレベルC、略して…」
Cってヤッちゃってないか？内臓とかも…あ、そろそろ暖かいよ！」

ツィエル「「エロ担当」「エロ様ｽﾃｷｰ」「エロ魔人」　名前だから仕方ないね！」

ツィエル「「おっぱい！」「桑梓杙楼」「おっぱいぷるんぷるん！」「おっぱい！おっぱい！」
おっぱいは正義だ！あと途中の漢字は『母性を感じる』とか『立派な父母に感謝』らしいよ！」

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マイペースにも程があるアンジニティ探索は相も変わらず続いている。
話し相手たちも、世界の隔壁やら噂の発信源やらにたどり着いたという話は聞いていないようだ。

砂地や山をうろうろしながら少しずつ前進しているが、部屋を問題なく使えるため割と快適だ。
シンとその連れに野宿をさせておきながら部屋でぬくぬくしているのは少し申し訳ないのだが。

インヘル「何やってんだ？」

ツィエル「日記書いてるとこ。三日坊主より続いてるんだよ？」

ベッドに転がり羊皮紙に意味のない文章を綴る。
横から覗き込まれてヒラヒラ紙を振ってみせると抱き枕は興味なさげな瞳を向けた。

インヘル「そいつは良かったなァ」

ツィエル「なんかバカにしてない？いーけどぐぇっ」

インヘル「おー、相変わらずいーい抱き心地だな」

ツィエル「うぅぐおおぉぉぉ重い重い重い重い重い重い重い重い重い重い重いってこの百貫デブぁああああアアッ！！！！！」

背中からのしかかってくるインヘルは本気で重い。身長は2mもないくせに！重い！
首を必死で反らして重しの顔を見上げれば、軽く顎を撫でながらニヤニヤと笑っていた。

インヘル「百貫デブなァ、375キロってか。それより遥かに重ぇぜぇぇ？」

ツィエル「威張るな天然ブラックホールめぇえええッ！！あとその無駄な知識が腹立つ！」

内臓がじわじわと潰される。反らした背骨が軋む。頭の奥で心臓が早鐘を打っている。
無意識に握りしめた手のひらがゆぅっくり開かれて、男の指が這う。
胸がつぶれる。視界が回る。羊皮紙にインクが飛び散った。同時に眼の奥で火花が散った。

体を引き起こされても暫く何も見えなかった。全身が浮いてる気がする。
耳のそばで満足気な吐息が聞こえて、力なく頭を振って頭突きをかました。

ツィエル「…………なにする」

インヘル「あン？ほっとんど体重かけてねえのに抵抗しなかったのはお前だろ」

ツィエル「む…………」

インヘル「隠し事ができると思ってんのか」

ツィエル「…………」

向きを変えてしなだれかかる。
インヘルの体は確かに重いけど、本気で潰れるくらい体重をかけてきたことはない。
あくまで私の動きを封じるためというか。触ったとこだけ重力操作でもしてるんじゃないかな。

筋肉がしっかりついてる胸板に額をぶつける。規則正しく上下する感触はいつも私を落ち着けてくれた。
いや、落ち着かなくされた記憶のほうがありすぎるけど。有り余ってるけど。

ツィエル「私たちが知り合ってから何年経ったのかな」

インヘル「お前は相変わらず訳わかんねぇなァ。……千年たったか経たねえか」

ツィエル「はは。やっぱりそれくらいは経ってるよね」

猫を扱うように頭を、顎を撫でられた。
目を閉じて指先を追ってみる。

髪を掻き分けて指を通して。ほっぺたを包み込み、むにむに揉んでくる。
女の手だと思うくらいスベスベ、ちょっと冷たくて気持ちいい。

ツィエル「……休みが続くと時間の感覚が狂うって言うじゃない？」

インヘル「らしいな。私にゃ理解できねえが」

ツィエル「そりゃ無職なんだからそうでしょうよ。とにかく、日付の感覚は間違いなく鈍る」

インヘルは黙って私のほっぺたをむにっている。
…………聞いてないようで聞いてるからいいか。

ツィエル「実際、アンジニティに来てどれくらいかとか知らないし」

頬を撫でている手が止まった。多分、濡れたから。
雨が降っている。目を閉じていてもわかる。

頬に、温かくて、湿っていて、柔らかいものが触れた。
窓を叩いて流れ落ちていく音。不意にレンズの重さが無くなって。

ぴちゃ。頬を滑って瞼を撫でて、唇をくすぐってくる柔らかさ。
遠ざかる気配に目を開けると唇を舐めている不届き者がいる。

インヘル「……旨い」

ツィエル「張り倒すぞ。巨大猫め」

最近、情緒不安定でいけない。
周りには止まった存在しか居なかったから。止まった自分を自覚することは無かったし。
手を伸ばしてインヘルの首に触れた。いつも着ているタートルネック。それに手をかける。
特に嫌がりもしないどころか首を軽く反らして協力してきた。遠慮なく引っ張る。

肌年齢を問いただしたくなるような首筋。
何の躊躇いもなく口づけた。

インヘル「お？」

ツィエル「ん……いつ見てもすごい傷だ」

インヘルの首筋には、凄まじい傷痕がある。
首を一周する生々しい傷痕。やや斜めの角度で一刀両断されたらしい。

斬られたのは別の躯なのに傷はこっちに『出た』と本人は言うんだけどよくわからない。
聖痕じゃないのは確かだけど。魔王だし。

ツィエル「他の傷はすぐに治るのにね。生きてたんだなーって思った」

インヘル「お前の趣味もおかしすぎんだろ」

ツィエル「だって私――…む」

インヘル「柔らけえな」

ベアハッグ。じゃないけど。大きな体にスポッと包まれた。
しっくりくる。眠気にも似た安堵と安らぎに、満たされる。

私の魂はインヘルが持って行ってしまった。

心、ここにしかなく。

インヘル「……おやすみ」

漠然とした不安がドロドロに溶けていく。一時しのぎで長持ちしない平穏。
こぼしたインクを思い出したが素直に溶けることにした。

▲▲▲▲▲▲

エミル「ツィエルさーん、インヘルさーん、ごはんできましたよー」

そっと扉を開けて覗き込んできたのはエミル。対するインヘルの反応は淡白なもので一瞥をくれただけだ。
部屋の主であるツィエルはインヘルの腕の中で眠り続けている。

元々食事を必要としないインヘルはツィエルを起こすつもりは毛頭なかった。
エミルはツィエルを起こしたいがインヘルに近寄りたくはなかった。
…身長が50cmも違えば当たり前だろうが。

インヘル「…………………」

エミル「…………………」

双方無言である。にらみ合ったまま動かない。スヤスヤと聞こえてくるツィエルの吐息が場違いだ。
にらみ合いに飽きたインヘルはこれ見よがしにツィエルの体を撫で回し始める。
それでも一向に起きないツィエル。業を煮やしたエミルが叫んだ。

エミル「何してるんですかこんな時間からっ！！！」

インヘル「あン？見ての通り『優しくして』やってんだよ」

エミル「ぅ……く、ツィエルさんに触らないで！」

インヘル「コイツは私のもんだぜぇ？テメェに言われる筋合いはねえなァ」

エミル「あっ、あなたの物じゃないです！」

インヘル「なんなら聞いてみるか？」

ぐ、とインヘルはツィエルを持ち上げる。よほど深く眠っているのか為されるままツィエルはエミルの方へ体を向けた。
レンズを掛けたまま、割と幸せそうな顔で寝ているが、目元は僅かに赤かった。
エミルはそれを目ざとく見つけると顔をしかめた。

エミル「泣かせてるじゃないですか…！」

インヘル「いーや、違うなァ。泣かせたのはテメェだ」

エミル「はい！？言いがかりにもほどがっ―――――」

口を噤む。エミルが感じたのは悪寒だった。くつくつと響いてくる、笑い声のせいだろうか。
声の主は腕の中の所有物に頬ずりしている。今にも咬み付きそうに、尖った牙を見せつけて。

インヘル「お前は死ぬんだろ」

言葉の意味がエミルには理解できなかった。生きているから死ぬのは当たり前だから。
それこそ、何もなければ50年以上先だろうけれども。

この世界にも死がある。安らぎと言っても過言ではない。
もっとも、この世界に落とされるような存在は積極的にそれを望みはしないだろうが。

恐らくエミルもシンも『そういう状況』になったならば全力で抗うのは想像に難くない。
勿論、インヘルも大人しくやられるようなタマではない。
しかし―――

エミル「そ、んな、何十年もあとのこと気にするインヘルさんって苦労性ですね！！！」

インヘル「―――……」

　　　　ぷっ。

エミル「わ、わらわないでくだ」

エミルの抗議は爆笑にかき消された。
ツィエルを抱えたまま片手で顔を覆って笑うインヘルは実にキマっていた。
主に悪役的な意味で。

あまりにも長い馬鹿笑いにさすがのエミルも頬を膨らませると、不意にツィエルが目を覚ました。
笑いの治まらないインヘルと膨れっ面のエミルをのんびりと見比べている。

ツィエル「……おはむ」

笑みの形に固まった顔のままインヘルはツィエルに口づけた。
頭を押さえつけ口腔に舌を押し込む濃厚な一撃。

そこにエミルが割り込んでツィエルを力任せに引っ張り、体重に耐えきれず仰向けに倒れた。
ツィエルにだってそれなりの重さはある。その重さに潰れる前にインヘルがツィエルだけを持ち上げて膝の上に乗せ直す。

尻もちをつくエミル。ニヤニヤと笑っているインヘル。半分寝ているツィエル。
食事が冷め始めてジュコが突入してくるまで、そう時間は掛からなかったように思う。

いつか終わる幸せな光景。