『　――――… 』





昔、むかしから―――

その森は、決まった時間になると、何処からか寂しい音色のオルゴールの調べが、流れてくると言われていました。




暗い森の奥に、ひっそりと佇むその館は、”機械仕掛けの館”と呼ばれていて、決して狂う事の無い不思議なねじ巻き時計が、『 カチ、カチ 』と時の流れを刻んでいました。

その館は、全体がひとつの巨大なオルゴールとなっていて、ねじ巻き時計の二本の針が、丁度真上で重なる時に、決まって音を鳴らすのでした。




その館の主である男は、遠い昔に元の世界を追放され、この世界、この地、この森へと流れ。

巨大なオルゴールの館をつくった後に、七体のねじ巻き人形をつくりました。

男は、長い年月の間、ねじ巻き人形がこわれるたびに墓をつくり、新たな人形を目覚めさせ、そして―――…






『 ジィィ―――… 』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　『 ジィィ―――… 』
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　『 ジィィ―――… 』
　



男は、ねじをまわします。

最後となる人形を、目覚めさせる為に。





「―――… マスター？」
　



異変が起きたのは、そのねじ巻き人形がガラス玉の様な瞳を開いた時でした。

男は、手の中の”ねじ巻き”が鈍い音をたてて割れる音と共に、世界が歪み、ひび入る音を、確かに聞きました。




男は、手の中の”ねじ巻き”を見つめ、それからそっと人形へ手を伸ばしました。

そして、伝えたのです。




新たな”ねじ巻き”を見つけるように、と―――