ENo.2100 姫百合神

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遠きにありて思うもの

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紬とカノと凛についてでも話そう

三人は仲がいい。
正確には凛を嫌うことがなければ、大抵誰でも仲良くなれる。
凛に対しての好き嫌いはかなり差があるので嫌いな人はかなり嫌う。

それは置いておこう。

三人は仲がいい。
紬とカノは言わずもがなだが、凛とカノの仲の良さはかなりのものだ。
紬の次に歳が近く、紬の姉であり、六家としても繋がりが強いのもあるのだが…

そもそもの話だが、凛が両刀なのはどちらかといえば私の責任で、
私が琴音のパートナーになるといっていたのを子供の心ながらに聞いていたためだろう。
そして紬とカノが百合なのは、凛と私の影響なのだろうと思う。

仲が良いのはつまり、趣味嗜好の問題なのだろう。
琴音も私も今でこそまったくそんなことはないのだが、
現役の女子大生と女子校生が揃えばそういうこともあるかもしれない。

あえて私は、私のせいではないといいたい。

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料理が美味くなる。ということはない。
言われてみれば、台所で乱舞出来てもそんなことはないだろう。

「で、台所で乱舞できるようになると強くなるの？」

それは私にとっても疑問だ。
一般的に考えて【強くなる】とは思えないが、とりあえず前よりは身体の動きはよくなっているはず。

「新妻っぽくていいのかもしれんわね」

なんでだ。

「新妻かどうかは置いておいて、相変わらずよくわからない限定解除ですね」

確かに。
多少なりとも元の強さを取り戻すにしても、よくわからないことになってきた。
これで実際の強さを手に入れられるのか？

「よくわかんないけど以前もこんな感じだったし何とかなるんじゃない？」

「あちきの時はそんなものもなかったのだわ」

これでいいのか良いのかわからないが、こういうものなのだろう。
あまり今のところ目に見えた効果を感じた時はないのだが…

「まだ始まったはがり…だと思えば、こんなものですよ」

そうなのか？不安しかない覚えないのだが…

…
……
………

今一度この道。
以前は山に差し掛かり、手痛くやられ街に戻ることになったのだが。
今回は平原に止まり、山は避けて移動することになりそうだ。

「ま、今の状態なら山であってもそうは負けないだろう。というか負けなかったしな」

一度山での戦闘経験してみたが問題はなかった。
そういえば以前も一度は山で戦って勝っていたなとは思うが。

「しかし先の方の地図を見せてもらっても良くわからない世界だな」

「ほぼ一本道でどこも環境が良くない…やはり流通は途絶えてますね」

それはそうだろう。
そもそも街があるというだけで驚きだ。
流通をどうにかしようというなら街道の整備はともかくモンスターはなんとかしないといけないしな。

「モンスターが何とかできるくらいなら、結局どうにかなってるのだわね」

モンスターがなぜ湧いてるのかも１つの謎ではありそうだが。
奥へ行けばいくほど移動も辛くなるのは確かだ。
やはり奥へ行けばいくほど何かがあるとは言えそうだろう。
少なくとも、草加は奥に居そうではある。

…
……
………

「多少気楽に旅できるようになったは良いことだ」

「辛いばかりだと流石に先へ進むのも難しいしね」

「色々と、この世界のことが判明してさえいけばもっと楽しくなりそうなんですが」

「何もない世界のままでした、というのは出来るだけ避けたいな」

「その可能性も少なく無さそうなのが心配なのだわ」

何もない世界。
よくよく考えてみれば、私達のいた世界は【何か】があったのだろうか。
例えば魔力や霊力という力が若干存在していたり、異種族や先祖がえりが始まってはいた。
それは【何か】なのだろうか。

世界はそこにあるだけで、良いのではないだろうか

「世界、世界ねぇ…あんまりピンと来ないけど」

「むしろ、本当は【何かある】方が怖いのかもしれませんね。穏便、平穏、静かであるほうがいいと思います」

「それを言ったらこの世界は成り立ちからしてちっとも平和ではないのだわっ」

異世界、分割世界に移動することでその世界の持つ意味を探ろうとしていたが、
もし世界に意味があるとしたら神くらいのものではないだろうか、その意味を知っているのは。

「この世界に何かを欲しているから、期待しているのか。私は」

現実世界では叶えられないモノがあり、どうしようも出来ない。
だから他所の世界で何かを得て戻ろうと思っている。

それは、アンジニティに来るモノ達と同じで【浅ましい】のではないだろうか。

「人が何かを求めて行動するのは普通でしょ。何も考えなしに行動するほうがおかしい」

「まー好き好んでアンジニティに来てる理由がそもそも…」

カノを元に戻す、だう。
何も間違っては居ないぞ、うん。

「それだけではない気もしましたが…それと、元の世界にはないような甘味探しとか」

私は別に甘味が好きなわけではない。

「たまたまよね、そう、たまたま」

「男じゃないけどたまたま」

「凛さん、それは流石にアウトです…」

草加がいるのを知ってきたのは確かだが、
カノを元に戻す方法は異世界であればまったく思いもよらない方法があったかもしれない。
しかし草加なら何とかできるのは確かなのだから、アンジニティに来るのはおかしくないだろう。

「もしかしたら上手くいくかもしれないからってセルフォリーフにいって、結局駄目なのよりはいいけど」

「でも、草加なんかに頼ったら絶対に本家に戻ったら怒られるのだわ」

ソレは仕方ない。
カノを切り捨てようとした本家にとって、カノが戻ってくるのは都合が悪い。
それだけでいい顔をされることはないだろう。

「改めて考えると、どう考えても私も私は色々とばっちりを受けてる気がします」

「考えるまでもなくとばっちりよね」

「これだから15代目は…」

雪椿殿のことはあまり言ってやるな。
出来が良すぎると盲信するモノが増える。
それが厄介なことに私達の世代まで回ってきたのが問題なだけだ。

「うむ。いろいろ解決したら母様をとっちめてやるのだわ」

「私あんまりお母さんの記憶無いんだけど」

「つむちゃんは三歳の頃から離れてますからね…」

あの人のことも出来ればいってやらないで欲しい。
いい人なんだよ、今のようなお家騒動がなければ六家から慕われるような、な。

「多少は引きずり出したいが、力づくでは確実にこちらが負けるしな…」

なんだか、今日はそんな風に色々話していた。

◇

No.018

終了　　

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