ENo.653 リリーエ=E=ティーマ

私はエレ＝ヴィオレートの夜空を見上げた。

ああ、見渡す限り満天の星空だ。

さらさらと聴こえる小川のせせらぎ。

楽器虫の音色や夜鳥の歌声が耳を楽しませてくれる。

大きく息を吸い込むと芳醇な緑の香りがする。

夜風はそよりそよりと優しく体を撫でる。

白と緑の二重月も眩しいぐらいに輝いている。

綺麗な、本当に綺麗な空だ―――

―――この空が本物であればどれだけ良かっただろうか・・・・・

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頭部に緑色の大きな棘の生えた植物を載せた、多分木精の少女は紅い瞳を鋭く尖らせてこちらを睨んできた。

サボテンガールA・B「「俺に近づいて何する気だ？刺さるよ？」」

零砂「なんで山にサボテン　砂漠に生きなさい。」

リリーエ「敵・・・ですね」

リィン「えっ、戦闘ですか？」

有澤さんが呆れた様な口調で罠を仕掛けている間に、私は精霊に祈りを捧げ軽く体をほぐし呼吸を整えた。
そしてリィン君が強化の術式を起動させ、有澤さんが劇薬を塗布した刃を飛ばす。
刃は木精の少女の足に刺さった。

木精の少女が戦闘範囲に入る前に有澤さんの罠が作動した。

零砂「いつものに加えて爆発します。」
炸薬付き短剣が撃ち出されたものの、木精の少女の耳を掠っただけだった。

私達と木精の少女達との距離が縮まり本格的な戦闘が始まる瞬間、

へんてこりんな、え〜っと何て言ったらいいんだろう・・・・・

有澤さんの使い魔？みたいなのが牽制に弾丸をばら撒いた。

遠く距離を取って狙いもつけずに撃っているみたいなので直撃はしていないけれど、
それでも木精の少女達に少しのかすり傷ぐらいは与えている。

木精の少女が腕の棘を飛ばし、何本かが有澤さんに刺さる・・・痛そうだ。

サボテンガールB「放置希望。」

さらに別の木精の少女が頭の上の植物から緑色の棘をばら撒いた。
回避しきれなかった何本かを腕で防御する、刺さった部分が徐々に変色し始めた・・・
・・・棘に毒が含まれている！？慌てて引き抜く。

サボテンガールB「綺麗な薔薇には棘がある？・・・いや薔薇じゃねぇし。」

私は木精の少女達の中間に飛び込み、腕を伸ばしながら回転する様に薙ぎ払った。
少し、堅い手応え。流石は木精というだけはある。

しかも意外と素早い。
有澤さんが刃を飛ばし、リィン君が水圧の術式で攻撃するも回避されてしまった。

[パラパラと牽制の弾が地面を打つ]

私は足を止めた木精の少女に近づき、槍を体の真芯ではなく外側を抉るようにして突き出した。
先程よりは手応えがあったものの、やはり堅い。

木精の少女が頭上の植物を大きく振るようにして大量の緑色の棘を飛ばしてきた。
棘の数が多くて、避けられ、ない！

・・・痛い。思わず動きを止めてしまう。

もう片方の木精の少女が一際大きくて鋭い棘を飛ばしてきた！
避ける間も無く脇腹に刺さり、抉り、突き抜ける。
・・・・・っ！！もの凄く、痛い。

有澤さんが刃を飛ばしたものの外れ、リィン君が再び水圧の術式で攻撃して木精の少女を押し流す。

押し流した先でもう一つの有澤さんの罠が作動した・・・・・が、外れる。

零砂「そっちから襲ってきてスルーしてくださいはひどい話だ。」

[ヒュン、ヒュンと風切り音を立てて牽制の弾が飛んでゆく]

毒が私の体を蝕んでいる・・・体の動きが鈍くなっている。

槍の柄で木精の少女の足を払い距離を取る。

リリーエ「不怖の精霊、ウォヴォカ！」

赤黒い人型をした光が木精の少女を囲み命を削り取る。
・・・この攻撃は効いているみたいだ。

木精の少女達が普通の棘・緑色の棘・鋭く尖った棘を大量に飛ばしてきた！
私達は避ける事も出来ずに身を固くして棘の嵐に耐えた。

有澤さんが軽く刃を飛ばして回避を誘うと、狙い済まして致命狙いの一撃を放った。

零砂「のどが渇いたのでサボテンが蓄えている水を貰いましょう。」

こんな状況でもどこかとぼけた様な感じで刃を振るっている。
飛ばした刃が木精の少女の腹部に突き刺さった。

リィン君が神聖の術式を起動させて私の体を癒してくれた。
毒が体からスウッと抜けてゆく感じがして、かなり体が楽になった。

[パラパラと散漫に弾が発射される、一発が木精の少女の体を掠めた]

私の突き出した槍が木精の少女の肩に突き刺さった。
突き込んだ槍を少し押し込む様にして更に刺し込んだ後、槍を引き抜く。

木精の少女達が揃って緑色の棘をばら撒いた。
放たれる棘の本数はそれほどでもないが、速度が速い。
皆避けきれずに棘を体に突き刺してしまう。

有澤さんが致命傷狙いの一撃を放ち、リィン君が再度水圧の術式で攻撃を行う。
・・・少し動きが鈍くなったように見えるが、弱ったという感じでは無い。

[牽制の弾が見当違いの方向へ飛んでいく]

リリーエ「死を怖れるな」

私は槍を振るい、スペルで攻撃するも回避されてしまった。

木精の少女達がまた棘をばら撒く・・・避けられない。
でも、リィン君は以外と回避出来てる？

有澤さんが大きく振りかぶり、劇薬を塗った刃を放った！

零砂「すごく痛いですよ？　だから他の痛みは忘れられます。」

木精の少女に刃が刺さり薬が体に回る。
ついで致命狙いの一撃を、動きを止めた所を狙って放ったものの外れてしまう。

リィン君が楽器の演奏で効果範囲を広げた、神聖の術式を起動させる。
かなり消耗していた所でこの回復はありがたい。
さらに水圧の術式を放ち、木精の少女を押し流す・・・かなり弱ってきているみたいだ。

[牽制の弾が偶然木精の少女達を捉えたものの、弾に威力は無かった]

私は動きの鈍った方の木精の少女を石突で打ち据えると一旦後ろに下がり、スペルの詠唱に入った・・・・・

私がスペルを唱えると周囲に人型の赤黒い光が次々と現れた・・・
人型の光は円を描く様に木精の少女を囲んで、奇妙な音を発しながら周囲をゆっくりと回り始める
光が敵を覆い尽くし、悲しみの呪詛が命を削り取る！

はずだったが、寸での所で囲みから抜け出され失敗してしまった。

木精の少女達がまた揃って緑色の棘を飛ばす。

私と有澤さんに棘が集中し、何本も体に刺さる。

反撃とばかりに有澤さんが致命狙いの刃を飛ばした・・・命中、木精の少女が大きく体を震わせる。

リィン君が再度神聖の術式を楽器で効果範囲を広げて演奏する。

[牽制は木精の少女の片方しか捉えられていない]

リリーエ「死を怖れるな」

スペルを唱え、木精の少女の命を削る。

木精の少女達が棘を飛ばす、私とリィン君は何とか回避出来たが有澤さんは・・・・・

有澤さんは刺さった棘を気にもせずに刃を二つ飛ばした。
一発が頭上の植物を掠り、一発が腹部を切り裂いた。

リィン君が神聖の術式を二重起動させて有澤さんの傷を癒す。

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・

木精の少女達は肩で息をして、動きも鈍くなってきている。
あと一息といった所だ。

[牽制の弾の大半は外れる]

私はとても弱っている方の木精の少女を槍で突き飛ばし、もう片方にスペルの一撃を放った。

木精の少女達が棘をばら撒く、私とリィン君は何とか耐える。

有澤さんが突き飛ばされた方の木精の少女目掛けて、止めとばかりに刃を二本放った。
二本とも腹部に刺さり、

サボテンガールA「水分補給に使う気か・・・・・・もう好きにしろよ。」

と言って動かなくなった。

[牽制の弾が偶然当たる]

私は槍で木精の少女を突いた、反撃で棘を貰う。

有澤さんは一息ついている。

リィン君は楽器を構え、水鳥の舟歌の曲を演奏する。

―――演奏の心象風景が現れる
小川を流れる小船の上で
木精の少女はただ立っていた
川の水が盛り上がり
四羽の水鳥が姿を現す

水鳥が一羽一羽と空へ羽ばたく
木精の少女を掠めるように
ああ三羽目が体にぶつかる
形を砕けさせた水鳥が纏わる

水が木精の少女の体を縛る
体を縛り締め付け搾ってゆく
力は次第に強さを増して
そして

心象風景が砕ける―――

[牽制の弾は当たらない]

私は槍で一撃を与え、スペルを付加した一撃は回避される。

木精の少女はリィン君に棘を飛ばす。

有澤さんが刃を飛ばし、リィン君も魔力弾を放つ。

[牽制の弾は外れる]

木精の少女は体をふらつかせ、目の焦点も定まっていない程に弱っている。

私は木精の少女に槍を突き刺すと至近距離でスペルを唱えた。
命を削るスペルが木精の少女を包み、体を萎えさせる。

私は槍を引き抜いて後ろに飛びずさった。
木精の少女が最後の一撃とばかりに大量の棘を辺りにばら撒いた。
有澤さんが棘を浴びてしまう。

零砂「のどが渇いたのでサボテンが蓄えている水を貰いましょう。」

そう言って刃を飛ばす、木精の少女胸に突き刺さった。

リィン君が有澤さんの傷を癒すと水圧の術式を起動させ、木精の少女に止めを与えた。

サボテンガールB「水分補給に使う気か・・・・・・もう好きにしろよ。」

零砂「プハァ！　今日も水がうまい。」

やっぱり有澤さんって・・・・・

リリーエ「・・・・・終わった、みたいですね」

倒れた木精の少女達に向けて祈りを捧げる。

リィン「ホッ...」

リィン君は戦闘を終えてため息をついていた。

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山道を抜け砂丘に入り、また山道を歩く。

今回の旅の目的は薬岩を入手する事だ。

目的地は山岳地帯の奥深くにある。

『それにしても、食料が心許無いなぁ・・・・・』

そんな事を考えながら歩いていると、目の端にある壁が動き始めた。

ゆっくりとこちらに向かって来る、後ろには木精の少女の姿も見える。

私は槍を取り出し、構えた。