ENo.1346 田中　梅

さて・・・術式の組み換えも出来たし
それなりに捜索範囲も広げる事ができそうだ。
あとは街の探索をしながら術式の微調整と精度向上をしていければ、
２、３日でこの街の捜索は終了できそうだな・・・
今日はこの辺で切り上げて、休むとするかな。

「梅・・・戻ったぞ。こっちは何か収穫があったか？」
「戻りましたのね？装備の調達は順調でしてよ。良い所まで目途は立ちましたわ。
それと何度も言っているけど、そろそろ私の事は『紫音』と呼ぶ事くらい覚えられませんの？」

『梅』は『梅』だろうに、わざわざ『紫音』なんて言いかえる必要が・・・
それにしてもなんだ？
宿に入った時に
『しばらくここに滞在出来ますのね！』とか言いながら
せっせと広げた荷物を
また片づけ始めているじゃないか？
整理整頓って言葉をようやく覚えたか？

・・・それは、ありえんな

「そう言えば、あの白衣の男はどうした？姿が見えないようだが？」
「あら？聞いてませんでしたの？ラグさんは別行動することになりましたのよ」
「ほぅ。ついにお前の奇行について行けない奴が出たか・・・まぁ、それも仕方ないか」
「それも聞いていませんの？新人の子が入ったから、そちらの助っ人に行く事になったのですわ」

ん？梅の表情が一瞬変わったな？

「その新人って言うのは女か？」
「そうみたいですわね？良くは聞いてませんが・・・」

どうやら神仙の類で着物の良く似合う女らしいな。
梅は『まぁ、新人ですからフォローするのは当たり前ですわよね』とか何とか言っているが、
自分の近くに居た男が、別の女の所に行くのは正直面白くないらしいな。
別段『ラグラス』という男に、どれほどの興味があった訳でもなかろうに・・・
『女』と言う生き物は面倒な生き物だな。

「新人の子が魔法職系で打たれ弱いのも分かりますわよ。でも、私や白うさちゃんも十分にか弱い女性なのですから・・・その辺も店長は考慮してくれても良いと思いますわ！」

お前のどこが『か弱い』よ？
打たれ弱いどころか、打たれても、それはそれで喜んでいるような奴は
決して『か弱い』とは言わん。

「あ・・・そうそう。そんな事より、予定が変更になりましてよ？」
「何がだ？」
「この街の周辺の魔法店のメンバーで一斉に『ゾンビ退治』に行く事になりましたの。
だから、街から出ますわよ。やる事があるなら、早めに済ませておいた方が良いですわよ？」
「なんだって？！しばらく滞在って言っていたじゃないか！」
「そんな、私に怒られても困りますわ！魔法店でそう決まったんですのよ！」

なんて事だ・・・
仕方がない。一息ついてる暇は無いな。

「あら、またどこかに出かけますの？」
「当たり前だ。しばらく滞在するつもりで探索の計画を立ててたからな。
街から移動するとなったら、休んでる時間なぞあるかよ！」

くそ・・・時間がないとなったら多少のリスクを冒してでも魔法を使うか。
移動をし始めれば、また監視者から注意を反らす事も出来ようってものだ・・・

「行ってしまいましたわね。
また戻ってくるような話も出てるからって言おうと思いましたのに・・・
まぁ、人の話を最後まで聞かなかった方が悪いんですわ！
さて、荷物をまとめておかないとですわね・・・」